スタッフ
監督:キング・ヴィドア
製作:ヴァージニア・ヴァン・アップ
脚本:マリオン・バーネット
撮影:ルドルフ・マテ
音楽:モリス・M・ストロフ
キャスト
ギルダ / リタ・ヘイワース
ファレル / グレン・フォード
マンスン / ジョージ・マクレディ
オブレゴン / ジョセフ・カレイラ
ピオ / スティーヴン・グレイ
ケイシー / ジョー・ソーヤー
デルガド警部 / ジェラルド・モーア
エヴァンス / ロバート・スコット
ラングフォード / ドン・ダグラス
日本公開: 1949年
製作国: アメリカ コロンビア
配給: コロンビア
あらすじとコメント
引き続きグレン・フォード主演のノワールもの。どちらかというと、フォードよりも相手役のリタ・ヘイワースの魅力が存分に発揮された作品。
アルゼンチン、ブエノスアイレス。第二次大戦末期、アメリカから流れて来た、しがないギャンブラーのファレル(グレン・フォード)は、アメリカの海兵相手に、イカサマで小金をせしめた。
その直後、強盗に襲われるファレル。仕方なく金をだそうとすると、ステッキの先にナイフを仕込んだ、紳士然としたマンスン(ジョージ・マクレディ)に救われた。マンスンは、先ほどの彼のイカサマを見抜いていて、本当にギャンブルの自信があるなら、もっと高級な店へ行けと笑った。だが、この地でギャンブルは御法度である。それでも不敵に笑ったマンスンは、とあるクラブのカードを渡した。
後日、ファレルがその店を訪れるとマンスンに再会した。彼はその秘密カジノのオーナーだったのだ。自分と同じ匂いを嗅ぎ取ったマンスンは、ファレルにウチで働かないかと持ちかけた。
これで運が向いてきたと笑うファレル。すぐに信用を得て、旅行に行くというマンスンの代わりに店のナンバー・ワンとして代理を務めた。
益々、運が向いて来たとほくそ笑むファレル。やがて、旅行から戻ったマンスンが、旅先で結婚したと告げ、新妻を紹介した。
その女の名は、ギルダ(リタ・ヘイワース)・・・
訳アリの人間たちが織りなすノワール・ロマンス作品。
流れ者のギャンブラーが拾われ、忠義を誓った相手の妻と、過去に何やら訳アリであったと匂わせる。それが一体、何であったのか。
ストーリィとしては、微妙な三角関係と犯罪が描かれる。一応のひねりはあるが、所詮、時代を感じさせるのは到仕方ない。
ただ、この手の作品では、当時散々、持て囃されたキザな台詞が、本作でも、数多く登場するのが印象的ではある。
例えば、主人公とヒロインが初めて会った時に自己紹介で名前を名乗ったとき、ヒロインが「覚えにくいけど、忘れやすそうな名前ね」と意味深に笑う。
段々とヒロインのワガママぶりがでてくると、邸宅にメイドを入れてと言う。「醜女にしてね、私の周りには醜女と美男子しか必要ないの」。
そんな上から目線で接するリタ・ヘイワースが魅力的である。というよりも、彼女のための映画と呼べる。
何せ、彼女は本作で一世風靡をして、以後、『ファム・ファタール』女優として名を馳せて行く。
ワガママで、どこか色情狂と思わせるイヤラシサ。次々に主人公の眼前で、相手の忠誠心を試すかのように男を誘う。
常に、セクシーなドレスを纏い、後半では独特のハスキー・ヴォイスで歌を披露する。
そんな彼女のセクシーぶりが素敵である。しかも単なる悪女ではないという、少し複雑な役柄でもある。
ただし、主演のグレン・フォードが、ヘイワースを籠絡させるような色男に見えないのが残念。洗面所番のおじさんや、謎の紳士といった脇役が上手いだけに、逆に肩に力が入った感じが際立つ。
ロケなど一切ないのに、異国情緒を醸し出しつつ、いかにもの犯罪映画として進行させるキング・ヴィドアの演出は手堅く、それなりに成功してるといえる。
だが、当時、粗製乱造されたジャンルでもあるし、気を衒う演出や、ひねったストーリィで見せる類ではないので、目を見張るような佳作ではない。
どこか、道を間違えた「カサブランカ」(1942)のような印象とも感じた。
それでも妖艶なヘイワースの魅力を感じるには充分である。