余談雑談 2012年10月6日

俳優の大滝秀治の訃報に接した。

亨年87歳。大好きな役者であったので、とても残念だ。

実は、30年以上前であるが、二度ほど酒を酌み交わさせて頂いたことがある。一度は、祖父と父と四人で。そもそもは海外旅行先で、祖父と一緒になり、意気投合したのだとか。

当時から、映画好きであったので、同席させていただき、自分が、凄い役者だと認知した映画名を上げたら、あの独特の節回しで、良くぞ、その映画を見てくれたと大喜びした。実は僕は、あの映画で初めて認知され、それ以後、売れたのだ、と。

その時、倉本聡脚本のTVドラマで、なくてはならない役者であり、倉本一家として、中条静夫という役者も好きだと言ったら、益々、興奮して、同じ歳で遅く役者デビューした時期も同じ、ずっと、下積みで、同じ年に売れたんだよ、と嬉々として話してくれた。

日本酒を何本も空け、話に付いてこられぬ祖父と父を尻目に、倉本聡や若手の役者、黒沢明など、普通聞けない話を、興味深く拝聴した。まったく持って、画面から伝わる印象と同じで、陽気な人でもあった。

二度目は、自室にやって来て、花火大会を一緒に鑑賞した。ただ、あまりの人出に閉口し、翌年からはやってはこなかったが。

それでも、ある日、実に味のある字で宛名が書かれた郵便物が届いた。中には、自筆の自画像と倉本作品の台詞が書かれた二枚の色紙が入っていた。

倉本聡の愛弟子で、何度か、彼と仕事をした脚本家である、自分の長年の友人が、その色紙を見て、感嘆の声を上げた。滅多に、自画像入り色紙は書かない人で、しかも二枚もあるとは、驚いていた。

かといって、額に入れて飾るのも何だかなと思っていて、ずっと仕舞っておいた。

久し振りにその色紙を見つめている。やはり、日本酒を一献、手向けるか。

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