女優の森光子の訃報に接した。
テレビで速報の一報を見た瞬間、天寿を全うしたのだろうと思いつつ、すぐに自室を出た。
何てことはない、徒歩でいつもの飲み屋に出向くためだ。
小一時間かけて店に到着し、さて、一杯と口をつけたら、実家の母から連絡が入った。
何事かと思ったら、今どこなのか、親戚筋から連絡があり、お前のビルが燃えているんじゃないのか、と言う。
母は、何も知らないようだったが、どうやら田舎の親戚が、テレビのライブ画面を見て、慌てて電話を寄越したらしい。しかもビルの9階で、逃げ遅れいている人もいる模様なのだとか。
一瞬、不安が過ったが、折角、酒に口を付けたところ。何かあれば、別な連絡も入るかと思い、通話を終えた。
すると、すぐに地元の飲み屋の女将さんから、連絡が来た。内容は、同じ。
更に、不安が募ったが、目の前の酒の誘惑には勝てない自分。もし、自分の住むビルだとしても、現状では中には入れまい。何より、自分が逃げ遅れている訳じゃないし、と妙な自己詭弁。でも、前日、ビルの管理組合の役員さんの奥さんの葬儀に行ったばかりでもあった。
もしかして、天井の漏水に始まり、「呪われたビル」なのだろうか。
すると、飲み屋の女将さんから第二報が来た。今度は、火災現場の番地まで教えてくれて、ウチではないと判明。なので、他人事だと飲酒を続けた。
帰りがけ、火災現場の近くを通り、まだ、些か混乱している現場を尻目に自室に戻り、PCを開くと、何と知人から「心配メール」が来ていた。
何やかや言う、こんな自分でも、心配をしてくれる人間がいて、幸せモンだと、心が温かくなった晩。