影なき男 – DEADLY PURSUIT (1987年)

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スタッフ
監督:ロジャー・スポッティスウッド
製作:ロン・シルヴァーマン、D・ペトリ Jr
脚本:ハーヴ・ジンメル、マイケル・バートン 他
撮影:マイケル・チャップマン
音楽:ジョン・スコット

キャスト
スタンティン / シドニー・ポワチエ
ノックス / トム・ベレンジャー
サラ / カーティス・アレイ
スティーヴ / クランシー・ブラウン
ノーマン / リチャード・メジャー
ハービー / アンディ・ロビンソン
ベン / ケヴィン・スキャネル
ラルフ / フレデリック・コフィン
アーネット / レス・ラノム

日本公開: 1988年
製作国: アメリカ フィリップ・ロジャース・プロ作品
配給: ワーナー


あらすじとコメント

今回はシドニー・ポワチエ。ハリウッドで、初めてアカデミー主演男優賞を受賞し、認められた「黒人」俳優。代表作は「夜の大捜査線」(1967)だろう。シリーズ化されたが、どこかエリートというか、インテリというイメージを伴う役も多い。今回もそんな役柄の刑事ドラマ。

アメリカ、サン・フランシスコ。深夜、宝石店店主の家に強盗が入った。すぐに市警から、FBIに協力要請が入り、スタンティン捜査官(シドニー・ポワチエ)が陣頭指揮を執ることになった。だが、犯人は夫人を人質にし、ダイヤをスタンティンに持参するように指示した。そして警察の裏をかいて人質を射殺し、ダイヤを持って逃走してしまう。

数日後、落ち込むスタンティンの元に、ワシントン州のカナディアン・ロッキーの警察から、殺人事件の情報が入る。類似性を感じた彼はすぐさま現地へ飛び、間違いなく同一犯の犯行と断定する。

どうやら、渓流釣りで山奥まで行ったガイドのサラ(カースティ・アレイ)が率いる5人グループに紛れ込んだ模様である。間違いなく、国境越えを目論んでいて、しかも、殺人をも厭わない犯人だ。

彼はサラの恋人で偏屈なガイド、ノックス(トム・ベレンジャー)と後を追おうとするが・・・

執念で強盗殺人犯を山岳地帯、カナダまで追いつめていく刑事アクション・ドラマ。

宝石店店主が深夜、パジャマ姿で自分の店に慌てて入り、アラームが作動して、警察沙汰になる冒頭から快調な出だし。

そこに都会派でクールな捜査官が登場。まるで、「夜の大捜査線」シリーズの主人公バージル・テッブスそのものだ。だが、敵は一枚上手で、まんまと逃げられてしまうあたりから、些か違う人物像へとシフトしていく。

続いて、犯人がダイヤを持ったまま、山からカナダ国境を目指していると知り、人間嫌いで偏屈なガイドの山男とコンビを組んで追尾する展開が待ち受ける。

エリート意識先行で、上から目線の捜査官と、山の怖さも知らない素人が、と思っているガイドのコメディ的駆け引きを見せつつ進行する一方で、ガイドの恋人である女性が引率する、見知らぬ同士ばかりの渓流釣りツアー・グループの行程が描かれる。

だが、それまでに犯人の顔は一切、見せていないので、5人グループの内の誰が犯人か、という謎解きから、冷酷で平気で人殺しをする犯人が、いつ、どのような形で本性を現すのかというスリルが盛り上がってくる。

中々、上手い作劇だ。先読みをするこちらの想定通りだったり、裏切ったりと飽きさせない。

編集のリズム感や画面のカッティング、音楽の使い方など、定石通りであるのも、安心して見ていけた。

本作以前、10年もスクリーンから遠ざかっていたポワチエは、些か盛りが過ぎているので、アクション・シーンなど無理があるのだが、それを逆手に取った設定も微笑ましい。

しかしながら、それらの点に、どうにも制作側からの、主人公の設定と同様の『上から目線』が感じられた。

情報量なり、データを集約しての視点。心理学をも用い、計算し尽くされた結果、ハワイのワイキキ・ビーチからダイヤモンド・ヘッドを背景に見るアングルや、某浦安のリゾートの徹底管理されたサービス精神にも遺憾なく発揮されていると感じる類のもの。

決して、一緒に楽しみましょうというのではなく、発信側が完全管理してこその商売優先。

彼らからすれば、そこに『夢』を重ねる人間たちこそ、称賛に値する人間たちだよ、と感じたのは、単なる負け犬の視点だろうか。

それでも「映画」として娯楽的要素を散りばめ、当時としては半ば引退気味であった、どちらかというと、スノッブ的白人好みの黒人のアカデミー主演男優賞受賞の俳優をカムバックさせ、ありがちではある内容を愉しく、ちゃんと見せてくれる作品であることは認める。

とてもバランス感覚に満ちた「人間」「娯楽」「アクション」と三拍子揃った映画と認知出来ようか。

余談雑談 2012年12月15日
つい、この前のこと。 その日は、ふたご座流星群が深夜から早朝にかけ、活発化すると言っていた日でもあった、 一ヶ月近く、顔を出してなかった荒川区某所の老夫婦が静かに営むもつ焼き屋に飲みに出掛けてみた。 開店直後であり、誰も客は居なかった。する