スタッフ
監督:ウォルター・ヒル
製作:デヴィット・ガイラー
脚本:D・ガイラー、W・ヒル、マイケル・ケーン
撮影:アンドリュー・ラズロ
音楽:ライ・クーダー
キャスト
スペンサー / キース・キャラダイン
ハーディン / パワーズ・ブース
リース / フレッド・ウォード
スリムス / フランクリン・シールズ
クリブス / T・K・カーター
スタッキー / ルイス・スミス
キャスパー / レス・ラノム
プール / ピーター・コヨーテ
ボーデン / カルロス・ブラウン
日本公開: 未公開
製作国: アメリカ フェニックス・フィルム作品
配給: なし
あらすじとコメント
閉鎖された自然地帯で、繰り広げられるサスペンス・アクションから、イメージした。ピクニック気分で来た男たちが、巻き込まれる恐怖を描いた、未公開ながら、エッジの立った佳作。
アメリカ、ルイジアナ。1973年、州兵たちが行軍訓練のために召集された。テキサスから転入してきた石油化学エンジニアのハーディン(パワーズ・ブース)は、民間人の州兵とはいえ、仲間たちのレベルの低さに閉口した。
実際の兵士はベトナム帰りの軍曹だけ。後は、協調性がなく、好戦的なリース(フレッド・ウォード)や、人望はありそうだが傍観的なスペンサー(キース・キャラダイン)など全員で9名。約40キロの湿地帯を大した装備もなく、徒歩で行軍するのだ。仲間の一人は、目的地で女性を手配したと笑い、まるでピクニック気分で出発した。
ところが、軍曹が進路を間違えたことから、湖にでてしまう。困惑する一行。すると、その湿地帯にひっそりと暮らす先住民であるケイジャン族のカヌーを発見。引き返すのも面倒だとばかりに、置き手紙を残し、勝手にカヌーを拝借した。
途中まで漕いだところで、ケイジャン族が自分らを見ていることに気付き、軍曹は「ちゃんと返す」と叫ぶが、フランス系先住民ゆえ、言葉が解らないからか、無反応であった。しかも、一人が冗談で、空砲のマシンガンを発射し、面白がる始末。
すぐに、たしなめる軍曹だったが、その時、彼の頭を一発の銃弾が貫通した・・・
米国内で体験するヴェトナム戦争同様の恐怖を描く作品。
「州兵」とは、プロの兵隊ではなく、市井の人間たちがボランティアとして活動する『軍隊』だ。
日本人としてはイメージしづらいが、誤解を承知で言えば「消防団」か、ハードな「ボーイ・スカウト」のようなものか。
だが、軍服を着て、銃を携行する。といっても空砲であり、実弾は支給されない。そんな彼らは、技師や、高校教師といった通常は、普通の生活を送っている男たちだ。
当然、様々な価値観を持つ人間がいる。大した教養や学歴もなく、人が嫌がる行為をしても自身は「冗談さ」と笑い飛ばすようなタイプや、虚勢を張りたがる人間。
しかし、ここは遠く離れたヴェトナムの戦場ではなく、アメリカ国内だ。どこか、他人事でピクニック気分。
そんな連中が、悪ふざけでした行為から、ひとり、また、ひとりと殺されていく。
言ってしまえば、自由主義というか、個人主義という名の元で、子供じみた単なるワガママな自己優先が招いた結果。
しかし、たったひとりの現役軍人の指揮官が死んだことから、まったく収拾が付かなくなっていく。
当然である。ヴェトナムにも行かず、地元で普通に生き、ボランティアで参加する州兵なのだから。
そして、ナンバー2が無能だったらどうなるか。中には、差別主義的な人間もいるし、好戦的で実弾を密かに持ち込んでいる奴もいる。精神に異常をきたすのがでて来るのも当然だろう。
相手は、フランス系の先住民なのだが、フランス語を話す教養ある人間もいない。つまりは、言語による意思疎通ができない上、食料も実弾もほぼないという状況下。
しかも、見知らぬ湿地帯で地理にも疎く、完全なるアウェイなのである。
そこで、忍び寄る恐怖が描かれる。当時、泥沼化していたヴェトナムと同じ状況下に放り込まれたのだ。
相手が、どの様にでて来るか分からず、仲間割れも発生していく。
開拓時代に、銃や力で先住民たちを蹂躙し、ヴェトナムでも「正義」の名の元に、世界の警察とばかりに戦争を始めたことに対する自己批判とも取れる作品。
しかし、この閉塞感と、そこから派生する恐怖は尋常ではない。