兇彈 – THE BLUE LAMP (1949年)

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スタッフ
監督:バジル・ディアディン
製作:マイケル・バルコン
脚本:T・E・B・クラーク
撮影:ゴードン・ダインズ
音楽:アーネスト・アーヴィング

キャスト
ディクスン / ジャック・ワーナー
ミッチェル / ジミー・ハンリー
ライリー / ダーク・ボガード
スパッド / パトリック・ドゥーナン
ダイアナ / ペギー・エヴァンス
ロバーツ / ロバート・フレミング
チェリー係長 / バーナード・リー
ディクスン夫人 / グレイディス・ヘンソン
ハモンド署長 / ウィリアム・マーヴィン

日本公開: 1950年
製作国: イギリス アーサー・ランク作品
配給: BCSC、NCC


あらすじとコメント

ロンドンが舞台となる犯罪絡みのドラマで繋げた。セミ・ドキュメンタリー・タッチの雰囲気を十二分に発揮した、若き日のダーク・ボガードが出演した静かなる力作。

イギリス、ロンドン。パディンドン警察署に20年勤務するヴェテラン巡査ディクスン(ジャック・ワーナー)は、定年間近であったが、地域の安全のため、更に5年の勤務延長をしようとしていた。彼に子供はなく、妻と相談し、新米巡査を下宿させるような好人物でもあった。

日々、夫婦喧嘩や貧乏ゆえに妻に暴力をふるう夫の摘発など、忙しく働いている。ある時、暴力亭主から救った夫人から、17歳になる娘ダイアナ(ペギー・エヴェンス)が、家出したので捜索して欲しいと写真を渡された。

そんな彼女は、恋人のライリー(ダーク・ボガード)と同棲していたが、彼は仲間と組んで宝石商強盗を企てていた・・・

実際の警察官が大挙して出演する、地味だが堅実な作品。

拳銃を携行しないことで有名だった、当時のイギリス制服警官。日々、地域の安全を図り、人々の日常生活を手助けする。

主人公は真面目で滋味あふれるヴェテラン警官だ。

そんな巡査が、捜索を依頼された家出娘が強盗計画に巻込まれていたことから、更に事件に関わっていくという展開。

それをどのように解決していくのか。本作は「警視庁啓蒙映画」の類である。かといって、スーパー・コップや破天荒なヒーローは登場しない。しかも、犯罪自体が決して大掛かりではなく、小さな窃盗。

ということは、当然、派手な銃撃戦もない。まったくもって、実に地味な展開をみせていくのだ。

ただし、犯人側は拳銃を所持している。その時、丸腰の警官たちはどのような行動を取るのか。

しかも、現在と違い、パトカーにしか無線がなく、徒歩でパトロールしている警官は、一々、公衆電話か、提携先である一般住宅からしか警察署に連絡できないため、初動捜査や救援要請なりが、遅れるのだ。

実に、まどろっこしい。しかし、それは当時の当たり前のことである。

そこからして、現代映画のスピードに慣れた観客は、馴染めない可能性も高いだろう。

それでも、本作のために実在する警察署が全面協力し、実際に警察署でロケを決行させ、制服警官も出演させている。

ゆえに、ホンモノの存在感なり、リアル感が増していると感じた。

それこそ、本作のプロデューサーである、マイケル・バルコンが提唱した作劇法。劇映画とドキュメンタリーの融合である。

本作では、そこに実際の警察の全面協力が加わるという、三位一体となっての映像が展開され、警察、犯人側と、それぞれのドラマが描かれる。

妙にリアルであり、それでいて劇映画の雰囲気もあるという不思議な感覚に陥った。

どことなく、「七人の刑事」なり、東映が製作した「刑事物語」シリーズといった、50年ぐらい前の日本の刑事ドラマの走りと感じた。

内容も地味過ぎるし、後に名優となるダーク・ボガートの演技も、さほど片鱗を伺わせない。

それでも、当時の息吹を感じさせるロンドンでのロケ・シーンや、警察官を筆頭に、クライマックスでのドッグ・レース場の券売師といったプロの役者ではない人間たちの迫力が、映画を盛り上げている。

とびきりの秀作という類ではないが、リアリティ溢れる警官ドラマの力作である。

余談雑談 2013年1月12日
昨年末で閉ったもつ焼き屋。 読者の方から、最終日は行ったのかどうかとのお問い合わせを頂いた。映画の本文でなく、ここに関して連絡を頂くのは、少し照れくさいが、この場でご返答させていただきます。 結局、行きました。 2012年12月30日の日曜