スタッフ
監督:ケン・アナキン
製作:ウィリアム・マックィティ
脚本:アラン・ファルコナー
撮影:レジナルド・ワイヤー
音楽:クリフトン・パーカー
キャスト
ジェノー警部 / ナイジェル・パトリック
メイシー / マーガレット・ホワイティング
マリー / キャサリン・ウッドヴィル
チャーリー / コリン・ブレークリー
ホイル / ダーレン・ネスビット
ベストウィック警視 / ハリー・アンドリュース
ラスキン / ジョン・コーリー
セイル / フランク・フィンレイ
ベン / マイケル・コールズ
日本公開: 1963年
製作国: イギリス、アーサー・ランク作品
配給: RKO
あらすじとコメント
今回もイギリス製で、刑事が活躍するドラマをチョイスしてみた。「渋い」と言えば格好良いが、どこか「地味な」安っぽさがある、いかにもB級ティストのドラマ。
イギリス、ロンドン。検挙率が低下し、収賄問題まで取り沙汰され、信用失墜中のロンドン警視庁。そこで上層部は、盗聴装置などの先端機器を取り入れ、逆に、旧態依然とした『情報屋』との接触を一切、禁止するとの命令を下した。
銀行強盗犯を追っているジェノー警部(ナイジェル・パトリック)は、その席上、懐疑感を露わにした。それというのも、警部は腕利きの情報屋ラスキン(ジョン・コーリィ)を抱えていたからだ。だが、ラスキンの弟(コリン・ブレークリー)は、そんな兄貴を心配し、いつか殺されるからと別なビジネスを兄弟揃ってやろうと持ちかけた。
それでもラスキンは、信用するジョノーのために強盗犯の有力情報を提供した。主犯は、単なるチンピラと思われている売春婦のヒモ、ホイルだと。
訝しがるジョノーのために、更に探りを入れ、新たな強盗事件を知るが、ホイルに見つかって殺されてしまい・・・
組織ではなく、自分らしい捜査を優先した刑事が辿る運命を描く刑事ドラマ。
合理的で新式のスタイルを嫌い、あくまで地道な捜査と人間関係で捜査を進める主人公。
彼が抱えている「情報屋」は、お人好しで妙に憎めない男。そんな情報屋が殺され、苦悩する主人公だが、犯人逮捕のため、今度は弟に協力を依頼する。
しかし、弟は警察への協力を拒否し、単身で復讐を誓う。一方で、犯人側は主人公をハメようと画策してくるというストーリィ。
自分のスタイルと信念を貫こうとして、窮地に陥って行くのは、当然の展開である。
確かに武骨で、あつかましさを感じさせる刑事ではある。時流に乗れない男と組織命の官僚的な警察関係者たち。
他方、下層階級であるがゆえに犯罪に走る輩や、同じ立場ながら堅気で真面目に働くが、自分らでの復讐を誓う人間たち。
そういった登場人物たちの背景を手堅く描いて行くケン・アナキン監督の手法は、目新しさもなく、実に地味である。
それでも、ヒモがどのように女を懐柔していくかという手口や、犯罪グループの上下関係や立場なりが、きちんと描かれていて納得できる点も多々ある。
逆に、先読みを楽しむとか、落とし所の妙味などまったくない作品でもある。日本での公開が、ロードショーでは無理で、二本立てでの公開がやっと、という類の映画。
主演のナイジェル・パトリックも、主役というタイプではなく、B級的作品でも主役から二番手というイメージが強い俳優。
だが、英国俳優らしく、手堅い演技を、常に披露する好きな俳優のひとりでもある。
それでも、こういった作品でも、一応は、日本で公開され、時代と共に埋もれていったものの、ワンコインという価格で字幕付きDVDで発売されるとは夢にも思っていなかった。
自分としても、タイトルこそ聞いたことがあったが、見たくてしようがないという、期待していた映画でもない。
果たして、そのイメージ通りではあったが、それでも本作以後も、あちらこちらのイギリス映画で見かける俳優たちの姿が確認できたのは嬉しいし、こういった地味な作品が手堅く制作されていた時代に郷愁を感じざるを得ない。
何てことない映画であるが、現在制作されている作品群よりも、安心感があるのは、こちらのうがった気持ちゆえだろうか。