スタッフ
監督:ハワード・W・コッチ
製作:H・W・コッチ、ローレンス・アップルボウム 他
脚本:ピート・ハミル
撮影:アーサー・J・オーニッツ
音楽:J・J・ジャクソン
キャスト
ライアン / ロバート・デュヴァル
モーリーン / ヴェルナ・ブルーム
ウィリアム / ヘンリー・ダロウ
スカンロン / エディー・イーガン
ガルシア / フィリッペ・ルチアーノ
リタ / マリーナ・デュレル
ジジ / ルイ・コセンティーノ
フェレル / ホセ・デュヴァル
カプート夫人 / ティナ・クリスチャーニ
日本公開: 1974年
製作国: アメリカ H・W・コッチ作品
配給: CIC
あらすじとコメント
アウトロー的刑事が主人公のドラマ。特に、1970年代以降に好んで作られたジャンルでもある。好きな役者のひとり、ロバート・デュヴァルが暴走刑事を演じる、どこかで見たような作品。
アメリカ、NY。市警のヴェテラン刑事ライアン(ロバート・デュヴァル)らは、プエルトリコ系クラブでの大掛かりな麻薬捜査をした。逮捕者続出の中、逃げた売人を追って屋上まで追いつめるライアンだったが、取り押さえる寸前に相手が落下死してしまう。行き過ぎ捜査だと騒ぐマスコミに対し、上層部と検察は査問委員会を開き、彼を無期限の停職処分にした。
腐るライアンだったが、仕方なくバーテンとして、しばらく様子を見ることにした。店の女店員で離婚歴があり、二人の子持ちのモーリーン(ヴェルナ・ブルーム)という恋人もすぐに出来た。
ある晩、彼の長年の相棒で、やはりその事件の影響で左遷させられたジジが顔をだした。彼は、新しい若い相棒と一緒だったが、何か言いたげだった。やはり、自分との相性が良かったとでも言いたかったのか。
翌朝、ライアンの元に電話が入る。『ジジが殺された』・・・
かつての相棒殺害を追う中年男の心意気を描く作品。
「悪」に対しては、徹底的な憎悪を持ち、執念で追いつめる刑事。
昔からある設定だ。当然、相棒には絶大なる信用を置いているが、組織や上層部には、平気で楯を付く。
こういった暴走型刑事が主人公になるのは、以前からもチラホラとは見かけたが、スティーヴ・マックィーンの「ブリット」(1968)で人気を博し、以後、「ダーティ・ハリー」(1971)と「フレンチ・コネクション」(1971)で、確立されたと感じる。
つまりは、この三本が以後の刑事ドラマに多大な影響を与えたということ。
本作もその流れを汲む一本である。しかも、「フレンチ・コネクション」の影響が、かなり強いと感じた。
対峙する組織がフランスから、プエルトリコに変わり、麻薬から銃器密売と設定こそ変えてあるが、かなり強引さを感じさせる変更である。
原作はNYの刑事を19年勤め上げ、挙句、停職処分になった男の実話を基にしている。
しかも、当の本人も出演し色を添える。というよりも、その彼こそが、力作「フレンチ・コネクション」の主人公『ポパイ』ことジミー・ドイル刑事のモデルなのではあるが。
そういったことを踏まえつつ、どこかにオリジナリティをだそうと腐心したのか、本作では、いきなり停職というところからスタートする。
以後、勝手に捜査するのは、あくまで「一個人」としてである。当然、警察内部にも彼の味方と敵がいて、マフィア側もその事実を知っている。それでも彼の強引な違法捜査は続行される。
そんな主人公を愛おしくサポートする女性。彼女が本作での緩和剤ではあるのだが、更に殺人が起き、主人公が犯人と疑われたりする展開は想像に難くない。
中盤、市営バスでの派手なカー・チェイスが登場するが、それも「ダーティ・ハリー」と「フレンチ・コネクション」を足して、二で割った印象。
そもそも、あれだけ派手なカー・チェイスを延々と続けながら、パトカーなりが一切でてこないとか、移民問題やプエルトリコの独立問題等、以後のストーリィ展開にも、かなり違和感を覚えた。
どうにもご都合主義が先走る内容。ただ、そんな進行でも、アウトサイダーであり、どこか哀愁を感じさせるデュヴァルの演技は手堅い。
他に有名どころの脇役が、まったく出演していない所為か、彼にだけ頼った印象が強いのが難点でもあるが。
何ともB級感が漂うし、かといって、やはりデュヴァルが主演した「組織」(1973)ほどのインパクトもない。
何とも中途半端な出来栄えであるが、ある種、奇妙なムードとトーンが統一されているので、何とか見られる作品にはなっている。