久方ぶりにプレス試写へ出向いた。
映画ライターを返上して、随分と経つが未だに、関係者向け試写状を送って来る配給会社もある。とは言うものの、超マイナー作とかアニメとか、食指が動く作品は、以外と少ないのも事実。
観たのは「ヒッチコック」。
アンソニー・ホプキンスが敢えて微妙なメイクでヒッチを演じ、ヘレン・ミレンが妻役。「北北西に進路を取れ!」のヒット直後で次回作に悩みながら「サイコ」を映画化しようとする内容で、これが中々良く出来た作品だった。
映画会社との確執や、妻の浮気疑惑などを背景に、ブロンド女優への偏向、のぞき見趣味といった、巨匠のいびつな性癖や、異常なまでの映画に対する思い入れ等、以前、何冊か読んだヒッチ本の印象が蘇った。
作劇は、TVシリーズ「ヒッチコック劇場」でのヒッチ自身の登場シーンを意識したウィットに富んだくすぐりや、大きなワガママ坊やに手を焼く脚本家でもある妻の立場、「サイコ」のモデルになった実在した連続殺人鬼への傾倒が入り乱れる。
ヒッチ夫妻を演じる主役二人の抜群の名演とジャネット・リーを演じたスカーレット・ヨハンソンの妖艶さや、アンソニー・パーキンス、ヴェラ・マイルズなどのそっくりさ加減も良い。
特に、映画史上に輝く『シャワー室の惨劇』場面をどのように登場させるかと思っていたが、その料理の仕方には、思わず感じ入った。二度ほど、それにまつわるシーンが登場するが、「サイコ」を見ている人間であれば、成程と膝を叩くに違いない。
映画ファンを意識した作品にして、マニア的心理をも揺さぶる作品。
4月から、順次全国公開される。マスコミ関係者だけでなく、普通に映画館で見たら、周囲の観客の反応が楽しみだと感じた。