スタッフ
監督:ジョシュア・ローガン
製作:ジャック・L・ワーナー
脚本:アラン・ジェイ・ラーナー
撮影:リチャード・H・クライン
音楽:アルフレッド・ニューマン、フレデリック・ロウ
キャスト
アーサー王 / リチャード・ハリス
グエナヴィア / ヴァネッサ・レッドグレーヴ
ランスロット / フランコ・ネロ
モードレッド / アンソニー・ホプキンス
ペリノア王 / ライオネル・ジェフリーズ
マーリン / ローレンス・ネイスミス
ダップ / ピエール・オラフ
クラリンダ / エステル・ウィンウッド
ライオネル卿 / ゲーリー・マーシャル
日本公開: 1967年
製作国: アメリカ ワーナー作品
配給: ワーナー
あらすじとコメント
今回もリチャード・ハリス主演のイギリスが舞台のコスチューム・プレイ。しかも、役柄も前回同様、実在したといわれる人物である。ただし、派手な活劇などではなく、ミュージカル劇。
イギリス、キャメロット。西暦7世紀頃のこと。ローマ軍による統治が終り、ヨーロッパ各地が混乱していた時期。イギリスは、理想の地キャメロットを統治するアーサー王(リチャード・ハリス)が、ほぼ全土を掌握し、収めていた。
そんな彼の元に、一度も会ったことのないグエナヴィア(ヴァネッサ・レッドグレーヴ)が、政略結婚の相手としてやってきた。偶然、森で出会った二人は、一瞬にして恋に落ち、華麗なる挙式を上げた。
そんなアーサーは、それまでの武力による圧政を止め、諸国の「騎士道精神」に満ちた騎士を一堂に集め、全国の平和と秩序を保つために『円卓会議』を招集した。この円卓会議は上座、下座が無く、誰もが平等でありながら、勇気と武勲があり、正義に燃えている勇者のみが参加できるものであった。
その報を受け、フランスからひとりの騎士が参上して来た。彼の名はランスロット(フランコ・ネロ)。自己抑制に長け、騎士道精神の塊のような生真面目な勇者であった。アーサーは一目で彼を気に入り、円卓会議に招き入れた。しかし、一方で、あまりにも生真面目過ぎてグエナヴィアの顰蹙を買ってしまう。
それでも己を曲げないランスロットに、グエナヴァアは・・・
イギリス伝説の王の物語をミュージカル調で華麗に謳い上げる巨編。
イギリス建国の父とも呼ばれるアーサー王。実在したのか、どうかの真偽があるが、それでも英雄であることに間違いはない。
時は、日本で聖徳太子が日本統一を目指していた時期に、ほぼ合致する。だが、こちらは戦争による統治が繰り返されていた乱世に、これからは、武力に頼るだけなく、平和で誰もが安心して暮らせる世を作るべきだと理想を掲げた王様として語り継がれている。
志は立派であるし、政治による統治を目指した理想的な王として描かれる。ただし、最愛の妻と、尊敬もし、心を許した最高の騎士との不倫騒動や、王の私生児である跳ね返り者が、彼の心身を脅かして行くという進行。
更にレジェンドでファンタジーらしく、王がいざというときに神頼みする、ある種の預言者も登場し、華麗なるコスチューム・プレイが、ミュージカル調で綴られていく。
元々は、ケネディ大統領が、一番好きだと断言した大ヒットミュージカルの映画化であり、「マイ・フェア・レディ」(1964)に、勝るとも劣らない超巨編として制作された。
この60年代は、「ウエスト・サイド物語」(1961)以降、次々と発表された群像劇的ブロードウェイ・ミュージカルを派手なロケや巨大なセットで、舞台以上に巨編として売りだした時期であり、本作も、その一つと位置付けられる。
ただし、個人的には、やはり、個人芸がモノを言うMGMの正調ミュージカルが大好きなので、いかにも拝金主義的、金かかってますよ、という60年代以降のミュージカル巨編は肌に合わない。
実は本作も、然りであった。元来、ミュージカル・プレイは、オペラに端を発しているのだろうが、作品が長く、映画化した場合も3時間近い長編になることが多い。
それも、苦手意識を持つひとつであるし、何よりも唄いだすと、途端に別人の歌声とわかるのも興ざめする要因。
映画化に当たっては、元来のミュージカル俳優などでなく、単に有名スターの起用も頂けないと感じる。
ただし、出演者の中では、イギリスのヴェテラン俳優で、8人乗りの救命ボートで起きる、恐怖の群像劇「二十七人の漂流者」(1956)や、「SOSタイタニック 忘れえぬ夜」(1958)などで、いつも船長役を演じているローレンス・ネイスミスが、特殊メイクで預言者を演じていて、珍妙なる起用と微笑んだ。
それに同じくイギリス系女優で、スリムというよりは痩せぎす感のあるヴァネッサ・レッドグレーヴが、いかにものイギリス女性らしい演技で魅了された。
内容としては、単なる歴史モノよりは、解りやすい「イギリス史」のお勉強ができる映画とでも呼べようか。