スタッフ
監督:アラン・コルノー
製作:アルビナ・ドゥ・ポワールヴレイ
脚本:A・コルノー、ダニエル・ブーランジュ
撮影:エチエンヌ・ベッケル
音楽:ジョルジュ・ドルリュー
キャスト
フェロー / イヴ・モンタン
ガネイ署長 / フランソワ・ペリエ
テレーズ / シモーヌ・シニョレ
シルヴィア / ステファニア・サンドレッリ
ネナール / マチュー・カリエール
アバディ / ヴァディム・グローナ
養豚業者 / クロード・バートランド
ペンショップ店主 / アリス・リーシェン
赤毛の女性 / セルジュ・マルカン
日本公開: 1978年
製作国: フランス、西ドイツ アルビナ・プロ作品
配給: 東映洋画
あらすじとコメント
渋い名優イヴ・モンタン。前回の「仁義」(1970)では、元刑事で射撃の名手という裏街道の役であった。今回は、孤独な中年刑事を演じたノワール的刑事ドラマ。
フランス、オルレアン。地元警察署に勤めるフェロー警部(イヴ・モンタン)は、横紙破り的な存在で、独自の捜査を進め、今夜も教会の美術品強盗を捕えた。しかも、派手に銃をぶっ放してだ。
その瞬間をカメラで撮影した美女がいた。シルヴィア(ステファニア・サンドレッリ)だ。しかし、彼女はカメラマンでも何でもなく、普通のショップ店員だった。
彼女はその写真を大きく引き伸ばすとショウ・ウィンドウに貼った。それを見かけたフェローは、彼女に声を掛ける。するとシルヴィアは、意味深に彼をデートに誘った。彼女のミステリアスな魅力に惹かれたフェローは、仕事も手に付かず、取り調べも早々に切り上げ、彼女の真意を想像しつつ、待ち合わせ場所に向かう始末。
だが、何やら影のあるシルヴィアは、適当に彼の誘いをかわした。益々、彼女に惹かれて行くフェロー。
しかし、そんな彼女には不倫相手がいた。その相手とは・・・
渋い中年刑事が愛欲に溺れて泥沼にはまって行く不思議なティストのノワール。
タイトルにもなっているパイソン357という拳銃を分解掃除し、自分で鉛を溶かして実弾を作り装填する。それをミルクを沸かしたり、目玉焼きを焼いたりという食事作りが並行して描かれる。
孤独な独身中年男の淋しいが、孤高な日常を描写する冒頭。クールで、実に格好良い滑りだしだ。
そんな刑事が黒の革ジャンに黒皮の手袋をはめ、犯人逮捕に向かう。
逮捕シーンもどこか、「ダーティ・ハリー」(1971)を連想させつつ、いかにも斜に構えたフランス映画的。
アメリカン的ヒーローでなく、渋さを強調したところが矜持といえようか。
そんな主人公がイタリア美人に出会ったことから、どこか情緒不安定さを滲ませつつ、ストーカーまがいの行動をとるようになる。
その美人が付き合っている不倫相手が、上司である警察署長だったことから、何とも不思議なティストへとシフトしていくのだ。
その上、何とも理解しづらいのが、体の不自由な署長の妻の存在。旦那に愛人がいることも承知の上で、アドバイスまでする。自分に女としての価値がないと確信しているからの言動ということか。
その妻の存在が実に不思議なゆえに、少々、冒頭のクールな雰囲気が変わり、感情移入がしづらいと感じてしまった。
そして、更に驚きの転調を見せる。何と、ヒロインであるはずのイタリア女性が殺されてしまう展開となるのだ。
当然、主人公が犯人ではないのだが、ストーカーまがいの行動を取った自分が疑われると確信し、捜査の撹乱に転じる。
そこから、主人公の言動に疑念を持つ部下や、署長、その妻らが絡んで来てのサスペンスフルな進行となる。
主人公は真犯人を探そうと、単身、仲間の眼を盗んで身勝手な捜査をし、当然、それらが更に彼をぬかるみに入り込ませていく。
つまりは、一歩間違えば、自分が真犯人であると関連付けて行く行為。見る側は誰が真犯人であるかは、殺人シーンから知っているので、主人公側がどのように、そこへ行き着くかが焦点となる。
ところがハッキリ言ってしまえば、ご都合主義へと終焉していくのが残念であると感じた。
冒頭のクールな出だしから、その雰囲気を継続させつつ進行するのではあるが、内容としては中途半端になってしまったという印象。
新たなるノワール映画としての挑戦であるのだが、登場人物たちそれぞれの個人主義的言動が、単純な話をわざとややこしくしたという、何とも、もったいない作品。