スタッフ
監督:スタンリー・クレーマー
製作:スタンリー・クレーマー
脚本:マーク・ノーマン
撮影:ロバート・サーティス
音楽:ヘンリー・マンシーニ
キャスト
メイス / ジョージ・C・スコット
リサ / フェイ・ダナウェイ
クリオン / ジョン・ミルズ
ヘルマン / ジャック・パランス
マリオン / ウィリアム・ラッキング
ウィルコックス / ハーヴェイ・ジェイソン
ウォブリ─ / テッド・ゲーリング
大柄の男 / クリフ・オズモンド
弁護士 / ウッドロー・パーフリィー
日本公開: 1974年
製作国: アメリカ S・クレーマー・プロ作品
配給: コロンビア
あらすじとコメント
前回の「さすらいの航海」(1976)で一応の看板を張った女優フェイ・ダナウェイ。当初は破天荒な若者役で頭角を著し、以後、「タフな女性」路線を歩んできたと感じている。そんな彼女が、タフさを強調させた作品を選んでみた。
アメリカ、オクラホマ。油田が次々と発見され、採掘されていた1913年のこと。その油田地帯の中にある小さな丘に、一本のやぐらが立っていた。試掘しているのは中年女性リナ(フェイ・ダナウェイ)と先住民の青年の二人。
ある日、彼女の敷地に車が侵入してきた。すかさず、ライフルで威嚇射撃をするリナ。「でて行け! ここは私の土地よ!」相当な猛者の態である。車から飛びだした男が叫んだ。「私だ、父親だ!」クリオン(ジョン・ミルズ)だった。しかし、それでもリナは、退去するよう叫び続けた。何故なら、少女時代、母親が死んだ後、彼女を残し、ひとりで行方をくらましていたからだ。今更、どの面下げて父親顔をするのか。
そんなクリオンは、大資本相手に、娘が単身で頑張っていることを聞きつけ、応援しようとやって来たのだった。何とか、話し合う状況になったが、露骨に父を毛嫌いするリナ。それでも娘をなだめ、助っ人が必要だと言い、クリオンは人手を探しに町に行く。
リナのことは誰もが知っていて、バカでじゃじゃ馬というレッテルが貼られており、協力を申しでる者など皆無。
そんな中、たったひとりが手を挙げた。流れ者の労働者メイス(ジョージ・C・スコット)だった・・・
大資本の妨害を相手に、石油採掘に賭ける三人の奮闘を描くドラマ。
「アメリカン・ドリーム」の最右翼である『石油採掘』。
男勝りの女性が、数々の妨害にも負けず、当たるとも当たらないとも知れぬ採掘に心血を注いでいる。
そこに、いささか頼りない父親と、何を考えているか分からぬ流れ者が絡んで来る。とはいっても、極貧の流れ者ゆえ、少額の金で魂まで売るような男にも見える。
つまり、一番強そうなのはヒロインという設定。そうはいっても、所詮女性であり、体力的には男には敵わない。
何とも微妙なパワー・バランスの上に成り立っている関係。
そこに、強硬手段にでても、相手を屈服させようと、武力なり、人海戦術で対応して来る大資本側。
その集団を率いるのがジャック・パランス演じる元陸軍大尉。完全に悪役としての登場だ。
以後も、解りやすい設定で進行するのだが、どうにも各々の個性が弱いと感じた。というか、誰もが人間としての弱さを持っていると感じさせる設定なのだ。
リアリティに重きを置いたといえば、それまでだが、映画としてそれが上手く機能しているかというと疑問符が付く。
そこに、巨匠と呼ばれながら、どうにも肩入れが出来ないスタンリー・クレーマーらしさがある。
ストーリィとしては、集団暴力によって主人公らが一度は排除されるが、再度、篭城し採掘を始める。すると今度は、大資本側は兵糧攻めを始めるという展開。
しかし、かなり穴のある筋運びでもある。丘の奪還から、お互いが殺人をも厭わない展開なのに、たった三人しかいない丘に深夜に奇襲をかけることもなく、じっとギブアップを待ってみたり、大資本側のボンボンが、武力行使は許さんと、妙な「良い人」だったりと、実に中途半端。まあ、雇われ側と違い、それこそ真の金持ちは喧嘩せず、ということか。それでも欲しい土地は欲しいのだ。
ゆえにドラマチックな盛り上がりに欠けるとも感じた。
要は、貧乏人が夢と富を目指し、命懸けで生きるということがメインなのだが、そこには「人間は懲りない性分」という揶揄というか、毒があることを描きたかったのだろう。
時代背景から、作品のリズムを鷹揚に描いたといえば、聞こえは良いが、どうにも実力派俳優を揃えた割には、生かし切れていないと感じる、些か残念な作品。