第七のヴェール – THE SEVENTH VEIL(1945年)

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スタッフ
監督:コンプトン・ベネット
製作:シドニー・ボックス
脚本:シドニー&ミュリエル・ボックス
撮影:レジナルド・H・ワイヤー
音楽:ベン・フランケル

キャスト
カニンガム / ジェームス・メイソン
フランチェスカ / アン・トッド
ラーセン博士 / ハーバート・ロム
ゲイ / ヒュー・マクダーモット
レイトン / アルバート・リューベン
スーザン / イヴォンヌ・オーエン
ケンドール博士 / デヴィッド・ホーン
アーヴィング博士 / マニング・ワイリー
看護師 / グレース・アラダイス

日本公開: 1947年
製作国: イギリス オータス・プロ作品
配給: BCFC/NCC


あらすじとコメント

前回の「超御ジェット機」(1952)でヒロインを演じたアン・トッド。あまり美系とは言えないが、当時、多くのイギリス映画で見かけた女優。そんな彼女が複雑な役を演じた作品。

イギリス、ロンドン。とある病室で目覚めたフランチェスカ(アン・トッド)は、看護師たちの目を盗むと、病院を抜けだし、橋から身を投げた。しかし、彼女は通りかかった警官に助けられ事なきを得る。

再び病院に戻ってからは、自失状態で、医師の問いかけにも一切、応じなかった。そこで、精神分析の権威ラーセン博士(ハーバート・ロム)が呼ばれ、催眠治療をすることになる。

フランチェスカは催眠誘導により、自分がピアニストで、伯父のカニンガム(ジェームス・メイソン)のことを語りだした・・・

人間の原体験と、恐怖感情を描くサスペンス心理劇。

タイトルの「第七のヴェール」とは、人間の深層心理のことを指す。

由来はオスカー・ワイルド原作の「サロメ」。ヘロデ王の前で、踊り子サロメが七枚のヴェールを一枚ずづつ脱いでき、最後は一糸纏わぬ姿になるという内容。

ストーリィは、精神科医が彼女の14歳の女学生時代から、その謎を解き明かしていく進行である。

先ず、登場してくるのは、両親が死んで、14歳の彼女の後見人となる伯父。彼は彼女にピアニストとしての天賦の才能を見いだし、名ピアニストに育て上げようとする。

そして、初恋の相手となるアメリカ人のジャズ奏者、更に画家が登場してくる。

その三人がどのように、彼女の感情に入り込み、性格を形成させていったかを紐解いていくという謎解きスタイルである。

いかにも当時のイギリスらしい、白黒の陰影の付いた画面と、少しオーバーな演技によって進行していくが、いかんせん、現代では、推理劇としてのオチはイマイチ。しかし、ベネット演出は、イギリス時代のヒッチコックを彷彿とさせる画面構成や、カット割りでサスペンスを盛上げていく。

例えば、画面前部に横たわる女主人公のすぐ後ろに、催眠をかける医師が写っている。そして医師の誘導によって、昔へとスリップしていく場面。主人公はそのままで、後ろの医師がズーム・ダウンし消え、代わりに女学生時代がオーバー・ラップしてくる。

また、男と会話しているシーンでは、交互にアップによる切り替えしで、台詞が語られ、「私、踊りは嫌いなのよ」と主人公が顔を横を降った瞬間、彼女の顔が動きだし、そのまま男と踊っている場面に変換しているといった、幾つかは、非常に素晴しく、ハッとする。

そして、ラフマニノフのピアノ・コンチェルトやベートーヴェンの「悲愴」など、クラッシック曲が印象的に使用される。

このあたりにイギリス映画絶頂期の栄光を嗅ぎ取った。ただし、大どんでん返し的な妙味はなく、心理ドラマがメインなので、サスペンス溢れるスピード感もない。

どこか人間ドラマとしての重厚さと、するりとヴェールが一枚抜け落ちるようなサスペンスが混在している。

演技陣も頑張っているが、何といっても、いつも悪役専門のハーバート・ロムが、鼻メガネなどをかけ、神経質そうに、だが、有能さを醸しだす精神科医を力演しているのが面白い。

言い方を変えれ ば、本作はハーバート・ロムのための作品だと言っても過言ではなかろう。

佳作とまではいかないが、ソツなくまとまった作品ではある。

余談雑談 2013年9月14日
東京での五輪開催が決定した。報道は、慶びと歓迎ムード一色で、既に経済効果の試算が発表されたり、株価が高騰したりしている。 しかし、本当に都民の大多数が喜んでいるのだろうか。そもそも、ヘソ曲がりな自分としては、単純には喜べない。インフラ再整備