デッド・ゾーン – THE DEAD ZONE(1983年)

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スタッフ
監督:デヴィッド・クローネンバーグ
製作:デブラ・ヒル
脚本:ジェフリー・ボーム
撮影:マーク・アーウィン
音楽:マイケル・カーメン

キャスト
スミス / クリストファー・ウォーケン
サラ / ブルック・アダムス
スティルソン / マーティン・シーン
ウィザック博士 / ハーバート・ロム
バナーマン保安官 / トム・スケリット
ダッド / ニコラス・キャンベル
ヴェラ / ジャッキー・バローズ
スチュアート / アンソニー・ザーブ
クリス / サイモン・クレイグ

日本公開: 1987年
製作国: アメリカ D・D・ラウレンティス・プロ作品
配給: ユーロスペース


あらすじとコメント

ハーバート・ロム。大好きなイギリス出身の役者で、ふてぶてしさや、逆に気弱さを漂わす絶品の演技を披露する人物でもある。そんな彼が前回扱った「第7のヴェール」(1945)同様に、医師役で出演した、カルト的佳作をチョイスしてみた。

アメリカ。高校教師のスミス(クリストファー・ウォーケン)は、同僚でフィアンセのサラ(ブルック・アダムス)とデート後、単身で交通事故に遭い、昏睡状態に陥った。

5年後、ウィザック博士(ハーバート・ロム)の診療所で目覚めた彼は、かすり傷ひとつ負ってなかったことに驚き、続いてサラのことを尋いた。しかし、彼女は別な男と結婚したと聞いて消沈してしまう。以後、落ち込みがちな入院生活を送っていると、不意に看護師の手を握った瞬間、電気のようなものが走り、突如、火のなかで母親を呼ぶ女児の姿が浮かんだ。何と、その女児は看護師の娘で、現在、自宅が炎上中だと教える。彼女が慌てて帰宅すると、消防士に間一髪、救助された娘の姿があった。

予知能力のような特殊な才能が降臨したと感じるスミス。今度はウィザック博士の手を握ると、博士の幼少時代の姿が見えた。それを話すと驚く博士。まったくその通りだったからである。今度は過去も見えると確信した。

これを公表しては、大騒ぎになると感じたスミスは退院後、ひっそりと暮らそうとするが、どうしてもサラのことが忘れられない。

そんなある日、不意にサラが訪ねて来た・・・

不思議な能力を持ってしまった青年が辿る数奇な運命を描く佳作。

他人の手に触れると、その相手の過去なり、未来の人生を見てとれてしまう主人公。

そのことに恐怖を覚えるのは当然であり、一方で、恋人は結婚し、孤独を噛みしめるしかない。しかも、その亭主が支持する上院議員候補と握手した瞬間、驚愕の将来を見てとってしまうという筋運びだ。

他人の人生を見てとってしまう主人公は、自分に好意をもつ人間の悲劇は、何とか回避なり、解決してあげたいと思う。

つまり「性善説」の持ち主と言えるだろう。しかし、自身の心模様は複雑で、どうにも「ネガティヴ」な印象を漂わす。

特殊能力があるとは言え、スーパーマンのように強靭な肉体ではない。至って、普通の一市民である。しかし、人類の将来を変えかねない人物が登場すると確信した時、彼の取ろうとする行動は悲劇的である。

自分を助けてくれ、また、予知能力を持ったことを知った博士はユダヤ人であり、第二次大戦中に経験したトラウマを引き摺る人間である。

主人公は、そんな博士に尋く。「もし、貴方がヒトラーが台頭する前に、彼と知り会ったらどうするか」と。思いもよらぬ能力によって、他人の秘密を知ってしまうことに精神を蝕まれ、人妻となった相手への思慕を断ち切れない自分へのジレンマ。

そんな主人公を演じるクリストファー・ウォーケンが絶品。特殊能力に怯え、世俗から若くして降りてしまうという、線の細さ。精神的にも強くなさそうな風情を常に漂わせ、どこか虚無的でもある。

しかし、そんな主人公はクライマックスに向け、妖気を帯びたかと感じさせるほど、変化していく。

鳥肌が立つほどの名演である。他にも、上院議員候補を演じたマーティン・シーンによる、極端な二重性を狂気を漲らせて演じる姿にも見入った。

スティーヴン・キングの原作を奇才デヴィッド・クローネンバーグが映像化し、カルト的人気を誇るクリストファー・ウォーケンが演じるという三位一体の見事なハーモニーが堪能できる。

直截的な残虐シーンなどないが、ホラー要素を漂わせるミステリーの佳作に仕上がっている。

余談雑談 2013年9月21日
二週続けて連休である。シルバー・ウィークとも呼ぶらしい。そうは言っても、こういう時はどこにも行かぬ自分。まして週の始めは台風であった。 躊躇せず、することは決まっている。ベータからDVDへのダビングだ。このメルマガ同様、ライフ・ワークとも言