スタッフ
監督:アンソニー・ペイジ
製作:トム・サックス
脚本:ジョージ・アクセルロッド
撮影:ダグラス・スローカム
音楽:リチャード・ハートレイ
キャスト
コンドン / エリオット・グールド
アマンダ / シビル・シェパード
ミス・フロイ / アンジェラ・ランズベリー
ハーツ医師 / ハーバート・ロム
チャーターズ / アーサー・ロウ
カルデコット / イアン・カーマイケル
トッドハンター / ジェラルド・ハーパー
トッドハンター夫人 / ジェニー・ラナークル
伯爵夫人 / ジーン・アンダーソン
日本公開: 1980年
製作国: イギリス ハマー・プロ作品
配給: 東北新社/ワールド映画
あらすじとコメント
個性派脇役ハーバート・ロム。イギリスからハリウッドと幅広く活躍した俳優なので、数多くの作品に出演している。本作も、前回、前々回と同じく医師役で出演した、いかにも彼らしい、ある意味、解りやすい役を演じた映画。ヒッチコックのイギリス時代の名作のリメイク。
ドイツ、バイエルン。第二次大戦前夜1939年のこと。ドイツ軍は、国益優先とばかりに定期運行の国際列車をキャンセルし軍用列車を走らせることにした。突然の変更に戸惑いを隠しきれない旅行者たち。
その晩、アメリカ女性アマンダ(シビル・シェパード)は、ロンドンでの挙式を控え、ホテルで乱痴気騒ぎを繰り広げ、台頭していたヒトラーをバカにしたような振る舞いを取ったため、ナチスの兵士に殴られて、頭を打ってしまう。その場に居合わせた、やはりアメリカ人でライフ誌の記者コンドン(エリオット・グールド)と医師ハーツ(ハーバート・ロム)に、手当をして貰う。
翌朝、キャンセルされた列車が急遽、運行することになり、頭を打った後遺症と二日酔いに苛まれたまま、荷物も持たずに慌てて列車に飛び乗るアマンダ。そんな彼女は客室で一緒になった人の良さそうなイギリス人のピアノ教師フロイ(アンジェラ・ランズベリー)に誘われ、食堂車に行きお茶を楽しみ、客室に戻ると寝てしまう。
しかし、彼女が起きると・・・
傑作のリメイク作だが、ある程度、成功している部類に入るアクション作。
走っている列車内から忽然と消えるイギリス人女性。同じ客室にいたドイツ人らは、初めからそんな女性はいなかったと証言する。ドイツ人に限らず、イギリスの観光客らも、一様に存在を否定し、頭を打った所為で幻を見たとまで言われる始末。
さて、その女性はどこに行ったのかというストーリィは、オリジナルのままだが、当然、多少のアレンジが施されている。
先ず、オリジナルでは第二次大戦直前なので、ドイツとは特定せず、架空の国という設定だが、本作では、完全にドイツと指定していることが挙げられる。
続いて、ヒロインの設定が、アメリカ人成金のワガママ娘という存在から、一ひねりしてあり、彼女に協力する主人公も、イギリス人の民俗学者から、彼女と同国のアメリカ人記者へと変更。その他も多少の変更があるが、後は、ほぼオリジナル通りである。
ある程度、アメリカ色が濃くなったとはいえ、本作はれっきとしたイギリス映画。だからか、オリジナルでは、完全に主役たちを喰っていたクリケット好きの英国人コンビの存在が、本作では、更に生かされていたのには、思わず微笑んでしまった。
時代設定も変えていないので、どこかノンビリとした進行にも無理なく付いて行けるし、敢えて、ヒッチコックらしい技法を排除したことにより、ストーリィ本来の旨味も解りやすいとも感じた。
特撮やミニチュア・ワークを用いていないのも好感が持てたし、ダグラス・スローカムによる美しいカラー画面も旅情感を盛り上げている。
オリジナルは設定が面白く、何度もパクられた作品でもあるので、本作リメイク時にも既に何本もの派生系が存在していた。
なので、そこを逆手にとって、敢えて奇を衒うことをせず、正式なリメイクとして、鷹揚に作ったという印象。
1939年という時代背景を生かし、俳優陣も地味目ながら手堅く、イギリス冒険アクション映画の系譜としての良さも多少は感じ取れる。
こじつけやご都合主義的展開があるのは、織り込み済みのご愛嬌だが、オリジナルを見ていなければ、かなり面白いと感じるかもしれない作品であろうか。