汽車を見送る男 – THE MAN WHO WATCHED TRAINS(1952年)

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スタッフ
監督:ハロルド・フレンチ
製作:レイモンド・ストロス
脚本:ハロルド・フレンチ
撮影:オットー・ヘラー
音楽:ベンジャミン・フランケル

キャスト
ポピンガ / クロード・レインズ
ミッシェル / マータ・トーエン
ルーカ / マリウス・ゴーリング
デ・コスタ / ハーバート・ロム
ジャンヌ / アヌーク・エーメ
ポピンガ夫人 / ルシー・マンハイム
マークマンス / フェリックス・エイルマー
ルイ / ファーディ・メイン
ゴーアン / エリック・ポールマン

日本公開: 1954年
製作国: イギリス エーロス・フィルム作品
配給: BCFC、NCC


あらすじとコメント

前回紹介した「黄金の龍」(1949)で共演したハーバート・ロムとアヌーク・エーメ。今回も共演作にして、またもや犯罪が絡む、一種、独特な雰囲気を持つ作品。

オランダ、港町グローニンゲン。そこにある貿易会社で長年、会計係として堅実一本で勤務するポピンガ(クロード・レインズ)は、毎朝の通勤途中、踏み切りでパリ行き国際列車を見送るのが趣味だった 。

ある昼下り、社長のデ・コスター(ハーバート・ロム)と一緒のところに、パリ警視庁のルーカ警視(マリウス・ゴーリング)が、遠路遥々訪ねてきた。最近、パリに多額のオランダ紙幣が密輸されている事件の捜査だという。一切、外国にでたことのないポピンガには、まったく見当もつかないことだった。

しかし、警視がとある女性の写真をだした瞬間、社長の顔色が変わった・・・

真面目一本だった中年男に起きる人生最大の激動。

少年時代からの夢。それは一等寝台の国際列車でパリに行き、豪遊すること。それが、ふとしたことから現実味を帯びて、という話で、原作は「メグレ警視」シリーズで有名なフランスのジョルジュ・シムノンによるもの。

当然、主人公はとあることから大金をせしめ、殺人容疑者になり、パリへ向う展開となる。そしてパリで登場するのがファム・ファタール(悪女)という、絵に描いたような展開。

本来、白黒で渋く映画化しそうな題材を、新たなる試みとして「総天然色」によるカラー作品として映像化した。ゆえに、撮影の色彩感覚には、かなり配慮がなされている。

しかしながら、成功かといえば、首を縦には振れない。犯罪モノなのだが、オランダの港町の昼間の景色や、実際はそんなにカラフルではないパリのくすんだ白っぽい街並などを自然光で撮影すると、いまひとつ雰囲気が盛上らない。

特に『赤色』にはこだわりを見せているが、それでも、まだ、どこか色彩映画は、暗中模索の時代でもある。なので、犯罪映画としての雰囲気が上手く発揮されていない。

ただ、地味ながら主人公を演じたクロード・レインズは「カサブランカ」(1942)の警察署長や、ヒッチコック作品と硬軟取り混ぜた渋い演技を披露する性格俳優。彼の真面目一本から、やがて、異常性をも漂わせていく演技は上手い。また、お気に入りの俳優でもあるパリ市警警視役のマリウス・ゴーリングも、冷たさとイヤラシさを兼ね備えた演技で映画にメリハリを付けている。

それに、以後、「男と女」(1966)で、大人の女の焦燥感と、女としてのときめきを漂わすアヌーク・エーメが、パリの夜の女として出演しているのも興味深い。

本作はイギリス映画なのだが、オランダからパリへと舞台が移り、異国情緒溢れるはずなのだが、どうにも中途半端な国の描き方だと感じさせる印象なのは残念。

それにハロルド・フレンチの演出も凡庸で、メリハリの付け方のリズム感がぎこちない。

ストーリィと役者陣は興味深いので、もっと実力のある監督で白黒映画として製作していたら、中々興味深い作品に仕上がったであろう。

余談雑談 2013年10月12日
しかし、何と言うか。今度は、ベータのデッキが壊れた。もうすぐダビング本数が700本という時期なので、間違いなく稼働させ過ぎだろう。 折角、半分以上が終り、残りの映画を一覧表にして、どれとどれを一枚に入れるかと楽しい作業をしていたら、テープが