秋である。「秋」といえば、人それぞれだろうが、読書、食欲といったキーワードが浮ぶだろうか。
ところが、結構な台風が来たり、またもや別なのが発生と穏やかではない。まあ、こちらは引籠り生活がメインなので、ひたすらダビングの日々。
そんな中、久方振りに二人から電話が来た。二名とも女性である。
ひとりは銀座のマダム。遥か昔だが、銀座で飲んでいた時期もある。彼女は関西から、折角だからと大阪を飛び越え、銀座に来たデビューの駆け出しからの知り合い。以後、着実にのし上がり、十年近く前にママになり、そのポジションを長年続けていた。
しかし、客筋から、スタッフ、ホステスとすべてが変わり、夢見ていた『銀座』の価値観が激変し、やる気が失せたと。
単純に愚痴が言いたかったのだろうか。当然、現在の自分では金がないから行けぬ。というよりも、彼女は、店に来てとも言わなかった。
もうひとりは30年以上も前に、仲間たちと一緒につるんで遊んでいだ昔馴染み。彼女とは、こちらが会社を清算し、何とかフリーのライターもどきをし始めた頃に一度だけ再会し、それから約10年経つ。そんな彼女は、現在も独身で不動産管理会社の社長だ。
突然、こちらの地元に仲間と来たから顔を出せと酔っ払った声で言ってきた。時は日曜の夕暮れ。どうやら昼間から飲んでいる模様だ。
懐かしさで嬉しかったが、財布には千円札が一枚のみ。その週末は予定がないからと、敢えて金を下ろしてなかった。
さり気なく断ったが、どうしても顔が見たいと。居るのはカラオケ・ボックスだと。どうにも引き下ってくれないので、ビール一杯程度なら払えるかと足を運んだ。
店に行くと、何だか手下のような男性陣に囲まれ、楽しそうに歌っていた。当然、男性たちは、この人誰、という風情で、こちらを見た。本当に一杯だけ飲み、軽く話をして辞した。
秋は人恋しくなるのだろうか。かと言って、何か特別なことなど起きぬ。
まあ、単にモテる自慢ってことかな。