スタッフ
監督:テレンス・ヤング
製作:ハリー・サルツマン、アルバート・R・ブロッコリ
脚本:リチャード・メイバウム、ジョアンナ・ハーウッド
撮影:テッド・ムーア
音楽:ジョン・バリー
キャスト
ボンド / ショーン・コネリー
タチアナ / ダニエラ・ビアンキ
ベイ / ペドラ・アルメンダリス
ローザ / ロッテ・レーニャ
グラント / ロバート・ショウ
M / バーナード・リー
プロフェルド / アンソニー・ドーソン
クロンスキ / ウラデク・シーヴァル
マネーペニー / ロイス・マックスウェル
日本公開: 1964年
製作国: アメリカ、イギリス ユナイト作品
配給: ユナイト
あらすじとコメント
もうしばらく「列車」繋がりに。で、今回は人間ドラマからアクションに路線変更。このジャンルには数多くの佳作があるが、今回は超有名シリーズの一作を選んだ。個人的には、シリーズ中で一番好き。
トルコ、イスタンブール。ソ連大使館職員のタチアナ(ダニエラ・ビアンキ)が、英国情報部が喉から手がでるほど欲しがっている最新式暗号解読機を渡すから、諜報局員ボンド(ショーン・コネリー)に取りに来るようにとの打診が来た。情報部は、それが見え透いた罠だと気付くが、少しでも解読機入手の可能性があるならとボンドを乗り込ませた。
出迎えたのはトルコのイギリス側協力者ベイ(ペドロ・アルメンダリス)だ。ベイも罠だと進言するが、承知の上だと笑うボンド。
しかし、その見え透いた罠を張ったのはソ連ではなく・・・
イギリス製らしい冒険スリラー活劇の最後の輝きを放つ佳作。
現在でも続く大人気シリーズ。二枚目でプレイボーイの超有能スパイ。
本作は、そんな主人公が、いきなり悪の組織のエリート殺し屋に殺害されるシーンで幕を開ける。とはいっても、ちゃんとオチがあるので、思わずニヤリとさせられる。
これぞ、コメディ要素を加味して繰り広げられる冒険活劇スタイルの正調イギリス映画だ。
それでいてストーリィとしてはドンデン返しがあるわけでなく、最初からネタばらし全開での進行。
しかし、そのネタばらしをすることによって、以後、主人公がどのように窮地に陥って行くであろう興味を喚起させつつ、それをうまく捌いていくテレンス・ヤング監督の職人芸も王道イギリス映画の最後の輝きを感じさせる。
当初からシリーズ化されることを前提に制作されているので、本作も第一作「007は殺しの番号」“後に「ドクター・ノオ」に改題”(1962)の後日談としてストーリィが進行する。
ゆえに、当然、上司や秘書、兵器開発担当者といったレギュラー陣も継続している。
このヴェテランを含むキャストも充実していて安心感がある。もっとも、このサブキャラは主役が変わっても継続していくのだから、安定感があって当たり前だろうか。
主役といえば、本作はショーン・コネリーであるが、当初はフランク・シナトラ一家の重鎮であり、ジョン・F・ケネディの妹と結婚していた「史上最大の作戦」(1962)などに出演したピーター・ローフォードにオファーされていた。だが、彼は、シリーズ化ありきだったので降板したと言われている。
確かに当時のローフォードは、ボンドのイメージにピッタリだと思うが、それによって、自身のキャリアは落ちて行き、コネリーが有名になっていったのだから皮肉なものである。
それに、このシリーズの魅力は、敵役と秘密兵器であろう。本作では手強い殺人マシーンを演じたロバート・ショウも、後に有名になって行くし、敵組織のナンバー3の女性ロッテ・レーニャや、トルコのイギリス側協力者役のペドロ・アルメンダリスなども印象深い。
シリーズが進むに従って、ありえない設定になっていく秘密兵器も、今回は組立て式ライフルやアタッシュ・ケースなど、さもありなん的で、作品上で上手く機能していると感じる。
それに毎回変わるボンド・ガールの中でも、本作のダニエラ・ビアンキが一番のご贔屓だし、陸海空と繰り拡げられるアクションのバランスも良い感じ。
その中でも、列車のシークエンスは、カット割りやリズム感など、流石のイギリス映画と膝を叩いた。
ボンド映画でも、バランスが取れ、安定感がある作品である。