スタッフ
監督:ピーター・ハイアムズ
製作:ジョナサン・A・ジンバート
脚本:ピーター・ハイアムズ
撮影:ピーター・ハイアムズ
音楽:ブルース・ブロートン:
キャスト
コールフィールド / ジーン・ハックマン
キャロル / アン・アーチャー
ネルソン / ジェームス・B・シッキング
ターロウ / J・T・ウォルシュ
キャスリン / スーザン・ホーガン
ベンティ刑事 / M・エメット・ウォルシュ
ワッツ / ハリス・ユーリン
ウットン / ナイジェル・ベネット
ラーナー / J・A・プレストン
日本公開: 1991年
製作国: アメリカ J・A・ジンバート・プロ作品
配給: 東宝東和
あらすじとコメント
今回も列車がメインのアクション作。大作感はないが、逆に、こじんまりとしたからこそ、頭脳戦がメインとなり、緊張感が持続する快作。
アメリカ、ロサンゼルス。編集者のキャロル(アン・アーチャー)は知人の紹介で、弁護士のターロウとブラインド・デートをすることにした。
落ち合うとすぐ、ターロウに至急電話をしなくてはいけない用件が入る。自分のスイート・ルームから電話するので、隣室で待ってくれと言う彼に、躊躇いながらも付いて行くキャロル。すると、すぐにマフィアのボス、ワッツ(ハリス・ユーリン)が、手下と共に部屋を訪ねて来る。驚くターロウ。彼は組織お抱えの弁護士だったのだ。しかし、ターロウが組織の金を横領したことが発覚し、殺害に来たのだった。別室で、現場を目撃してしまうキャロル。当然、身の危険を感じ、行方をくらます。
一方、ワッツの組織壊滅を目論む地方検事補コーフィールド(ジーン・ハックマン)は、仲間の刑事とキャロルが殺人現場の目撃者であり、現在、カナダの山奥の小屋に避難していることを突き止めた。彼女に証言させれば組織は壊滅である。
コーフィールドと刑事は、不安感を顕わにする上席検察官の反対を押し切り、ヘリコプターでカナダへ向かった。
しかし、恐怖から証言を拒否するキャロル。それでも説得を続けていると・・・
実に、小気味良く進行するサスペンス・アクションの佳作。
冒頭の殺人目撃から、彼女に証言させようとする主人公の検事補がカナダまで行く過程は、割と普通に進行する。ところが、山小屋に着いてから映画は急変。
この突然の変調は絶妙であり、ショッキングだ。そこから主人公らの逃亡劇へとシフトして行くのだが、その後の展開が、また絶妙なのだ。
ある意味、ヒッチコックが得意とした「巻き込まれ型」の定石的展開であるのだが、そこはハイアムズ監督の独壇場である小気味良いテンポで、次から次へとサスペンスとアクションが数珠繋ぎになっていく進行。
拳銃はおろか、一切の護身用武器をも持ち合わせていない主人公たち。相手は、ヘリコプターからマシンガンなど財力にモノを言わせる組織で、追手はプロの殺し屋たち。
しかも、命からがら逃げ込んだのは列車である。今度は、密室サスペンスも加味されていく。
当然、追手も乗車してくるのは想像に難くない。そんな二人が列車内でバレないように、どう行動して行くのかや、誰かを味方に付けられないかとか、サスペンスが盛り上がっていく。
それを、実に緩急の付いたカット割りと独特の編集のリズム感で展開し、動と静の絶妙なタッチに、列車内の揺れる不安定感も加味され、どちらかというと頭脳戦の様相を呈してくるのだ。
中々、手に汗握る展開で、ド派手なスケール感溢れるアクションなどなくても、立派に映画として成り立っている。
本作制作時は、好きな脇役専門がいなくなっていた時期なのだが、殺害される弁護士役のJ・T・ウォルシュやヴェテラン刑事役M・エメット・ウォルシュ、追手役のジェームス・B・シッキングなど、登場時間の多少の差こそあれ、ご贔屓どころが出演しているので嬉しくなった。
そのあたりにもハイアムズらしさを感じる。そして、何よりも、脚本から撮影まで兼任し、派手さよりもアイディアと設定の妙味が強調され、予算さえ掛ければ良いという風潮に反抗している気骨が感じ取れる快作である。