スカイエース – ACES HIGH(1976年)

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スタッフ
監督:ジャック・ゴールド
製作:S・ベンジャミン・フィッツ
脚本:ハワード・バーカー
撮影:ゲーリー・フィッシャー
音楽:リチャード・ハートレイ

キャスト
グレシャム少佐 / マルコム・マクダウェル
クロフト少尉 / ピーター・ファース
シンクレア大尉 / クリストファー・プラマー
カテリーヌ / ジェーン・アンソニー
クロフォード少尉 / サイモン・ウォード
シルキン中佐 / トレヴァー・ハワード
校長 / ジョン・ギルグッド
ライル大佐 / リチャード・ジョンソン
ホエール将軍 / レイ・ミランド

日本公開: 1976年
製作国: イギリス S・B・フィッツ・プロ作品
配給: 松竹富士・東北新社


あらすじとコメント

前回の「翼よ!あれが巴里の灯だ」(1957)で描かれた大空への挑戦。主役は航空機だ。今回も大好きな初期の航空機が描かれる戦争作にしてみた。そこにはロマンと悲劇が混在する。

フランス、某所第一次大戦さなかの1917年のこと。ドイツ軍と交戦中のイギリス第76飛行中隊に、たったひとりの補充将校が配属された。クロフト少尉(ピーター・ファース)である。

彼は姉と共に敬愛する名パイロットにして、中隊長のグレシャム少佐(マルコム・マクダウェル)と一緒に飛びたいと志願してきたのだ。しかし、グレシャムは困惑顔。自分の名声を聞き、しつこく手紙で求婚してくる少尉の姉を想起させるからだ。その上、飛行時間も少ないのに、単純に希望と夢に燃える青年将校の死を間近で、何人も見て来てたこともある。

飛行中隊にはヴェテラン・パイロットのシンクレア大尉(クリストファー・プラマー)や、影のあるクロフォード(サイモン・ワード)らがいた。その誰もが戦闘で疲弊しており、希望に燃える青年をいぶかった。

そして、クロフトに初めての出撃命令がでたが・・・

大空への夢と現実の絶望を描く渋い作品。

様々な兵器が開発され、初の近代戦といわれる第一次大戦。

航空機による戦闘も初期段階。当然、パイロットを守る風防も未発達であり、ゴーグルを着け風雨を直接浴びる。機体や翼も金属でなく木枠に布張り。武器は機関銃のみで敵の顔を直視しながらの戦闘である。

速度も思うほど速くなく、のどかささえ感じるので、そこにロマンを想起される人間もいるだろう。

しかし、戦争である。逆に人間の生身さを感じるゆえに、恐怖心に苛まれるパイロットもいる。

勇敢な戦士である中隊長は、姑息な手段によってでも、敵を撃破して来た男。しかし、夢と希望に燃える青年たちの前では、正論を打つのである。決して、強い男ではなく、神経のか細さを感じさせる。

それでも、戦争という状況下で、自分を慕い、わざわざ遠方で激戦地にいる自らが率いる中隊に志願してきた青年に眼をかける。

一方で、神経衰弱になる先輩パイロットや、ヴェテランゆえに優しく接してくれる上官や、彼らに気に入られるかどうかで生死を分ける、自分たちよりも全員が年長でありながら、部下という整備士たち。

ストーリィは単純で、何も知らない青年将校の成長と、彼を取り巻く人間のそれぞれの精神模様である。

そこにどこか牧歌的だが、ゆえに生死を痛感させる戦闘場面がでてくる。

敵にも騎士道精神で接し、撃墜しながらも生存している相手には最大限の敬意を払うパイロットたち。

そこに紳士というか、将校ゆえの特権意識を持った誇り高さを想起させるが、主人公である中隊長は、そんな相手をも欺き生還してきた男である。

それでか、アルコール中毒であり、出撃前もウィスキーを煽ってから飛び立つのである。

誰もがどこか精神を病んでいる。しかし、新任の青年は、真面目だ。その「真面目さ」こそが、戦場では厄介であると確信している先輩たち。

そんな仲間たちが激戦が予想される出撃前に見せる、それぞれの優しさと厳しさ。連携あってこその勝利である戦闘に向かうパイロットたちは、毎回、自分の死を想像しつつの出陣なのである。独特の美学と死生観。

鳥のように飛びたいと願った人間が開発した航空機。

しかし、それはロマンや利便性を実現させるだけなく、不安定さによる墜落という死に直結する乗り物でもあった。

それが人間を殺す兵器としても活用されるのが戦争だ。その中で、人間の詭弁的脆弱さは、何ら変わらない。

どこか気高いロマンを感じさせつつ、重い心持ちになる力作である。

余談雑談 2013年12月14日
このところ、東京は一段と寒さが増した。実家のタバコ屋で店番をしていると、常連の誰もが、「寒い、寒い」と言ってくる。「寒気団が」と言う人あれば、「景気がさ」と言う人と様々で面白い。 でも、そうは言いつつ、このご時世にチェーン店のコーヒーの二倍