ハロルドとモード 少年は虹を渡る – HAROLD AND MAUDE(1971年)

メルマガ会員限定

画像を表示するにはメルマガでお知らせしたパスワードを入力してください。

スタッフ
監督:ハル・アシュビー
製作:コリン・ヒギンズ、チャールズ・B・マルヴィール
脚本:コリン・ヒギンズ
撮影:ジョン・A・アロンゾ
音楽:キャット・スティーヴンス

キャスト
モード / ルース・ゴードン
ハロルド / バッド・コート
チェイセン夫人 / ヴィヴィアン・ヒックルズ
グローカス / シリル・キューザック
叔父ヴィクター / チャールス・タイラー
サンシャイン・ドーレ / エレン・ギア
牧師 / エリック・クリスマス
精神科医 / G・ウッド
キャンディ / ジュディ・エングルス

日本公開: 1972年
製作国: パラマウント作品
配給: パラマウント


あらすじとコメント

今回も多感期の青年が主人公。自問することもなく、単純に走ることもしないタイプで、過激さが特徴。しかも、それを外に向って発散させるのではなく、いびつに表現するタイプ。何とも不思議なティストで描かれる佳作。

アメリカ、サンフランシスコ近郊19歳のハロルド(バッド・コート)は、金持ちで未亡人の母親(ヴィヴィアン・ヒックルス)の寵愛を受けながら、何不自由なく生活していた。

しかし、金持ち然とした母親や周囲の大人たちの常識的で冷たい現実主義に僻々しており、自殺ごっこをしたり、見ず知らぬの他人の葬儀に参列したりと彼なりの反抗を試みていた。

母親は、そんな彼の態度は先刻承知で、何事も上から指示するタイプだ。精神科医に通わせるだけなく、神父に諭させたり、軍人の叔父に頼ったりもしていた。それも気に入らないハロルド。しかし、自殺ごっこでしか自分を表現できないジレンマもどこかにあるようだ。

果ては、性格を直すために結婚しろとまで言いだす母親。その話を聞きながらも、彼は感情すらどこかに置き忘れて来た態だ。そんなハロルドは、見知らぬ葬儀で何度か同じ老女を見かける。

彼女はモード(ルース・ゴードン)と名乗った・・・

不思議なティストで描かれるファンタジー的ドラマ。

何不自由なく、召使がいるプール付きの邸宅に住む母子。母親は常に忙しくしているのが好き。男勝りと言えば格好良いが、自分が住む「クラス」の誇示と維持のためとも見える。

一方で、ひとり息子は「いびつ」だ。幼少から成長するのを自ら止めてしまったのか、笑うこともなく、かといって、母親に反抗的な態度も一切取らない。ただ、自殺ごっこを繰り返すのみ。

映画は冒頭から驚かされる。主人公の腰から下だけを映しだし、その後方に豪華な部屋の一部を見せつつの移動撮影。そして椅子に昇ると、ガクンと足が宙に浮く。

首を吊ったのだ。部屋に入ってきた母親はそれを見て、素知らぬ顔で電話をし、仕事のトラブルらしきことを片付ける。そして電話を切ると、「いい加減にしてよ」と言い放つ。

非常にカルト的ファンが付くと思われる冒頭。そんな主人公の少年が80歳の老女と知り合ってから、更に非現実的な世界へとシフトして行く内容である。

その老嬢を演じるルース・ゴードンが素晴らしい。酸いも甘いも噛み分けて来た風情ながら、乙女さを漂わすチャーミングな演技。それでいて、体制には反抗し、犯罪も厭わない。

とはいっても、破壊的なことはせず、車を窃盗するにしても暴力や武器に頼らず、相手を煙に巻くようなタイプ。枯れかけた街路樹を可哀そうだと言い、森に植え替えてあげようと掘り返す。住んでいるのは古い客車で、中には個人的な思い入れの品々が並ぶ。

内向的な少年が、惹かれて行くのも当然だろう。当時、流行っていた『ヒッピー』が80歳になったイメージとも呼べる、自由な老女。

一方、少年も母親や周囲の大人たちには、老女同様、暴言や暴力といった直截的な反抗を試みない。しかし、母から送られたイギリスの高級車である旧式のジャガーのオープンカーを霊柩車に改造したり、見合い相手の眼前でいつものように自殺遊びを繰り返す。

そういった奇抜な行動によって意思を表明し、他に自分の個性をだす術を知らない。母親以外の女性と口をきいたこともなければ仕方ないだろうか。

しかし、老嬢以降、見合い相手にもフランス系女優が登場し、彼の自殺が遊びだと見抜かれ狼狽する。

そんな少年が徐々に成長するに付け、次に巻き起こるのは異性への思慕である。

まさかと思わせつつ、爽やかなファンタジーとして描かれていくのだが、やはり、「人間」という現実が待ち受ける。少年は成長し、何を得て、何を消失させていくのか。

実に不思議な映画だが、好きな作品だ。

余談雑談 2014年1月18日
やっと修繕工事が終った。これで、晴れて新しい部屋でのスタートである。以前は天井部分の塗装のみであったが、今回は、更に絨毯も張り変えられた。また、一部剥がした壁のタイル部分も綺麗に修復された。 ところが、タイルが真新し過ぎてそれまでの部分と違