ワーロック – WARLOCK(1959年)

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スタッフ
監督:エドワード・ドミトリク
製作:エドワード・ドミトリク
脚本:ロバート・アラン・アーサー
撮影:ジョー・マクドナルド
音楽:ライオネル・ニューマン

キャスト
ギャノン / リチャード・ウィドマーク
ブレイスデイル / ヘンリー・フォンダ
モーガン / アンソニー・クィン
リリー / ドロシー・マローン
ジェシー / ドロレス・マイケルズ
ハロウェイ判事 / ウォーレス・フォード
マックオウン / トム・ドレイク
ベーコン / リチャード・アーレン
カーリー / ド・フォレスト・ケリー

日本公開: 1959年
製作国: アメリカ 20世紀フォックス作品
配給: 20世紀フォックス


あらすじとコメント

前回紹介した「西部の王者」(1944)で、魅力的な先住民を演じたアンソニー・クィン。その風貌から、先住民だとか、有色人種系の脇役を演じることが多かった。そんな彼が、それまでとは違う姿で登場する凝った意匠の西部劇。

アメリカ、テキサス西部のとある町ワーロックは、近くの牧場のマックオウン一家が、好き勝手し放題に暴れまわり、荒れていた。

今日も、手下のギャノン(リチャード・ウィドマーク)らが、集団で保安官を脅し、追いだしてしまった。住人たちは、このままでは町は壊滅すると危惧し、評議会を開いて、腕は立つが悪い噂もある凄腕ガンマンのブレイズデイル(ヘンリー・フォンダ)を保安官として招聘することにした。中には、心底、彼を嫌うものもいたが、背に腹は代えられぬ状況でもあった。

就任依頼を受けたブレイスデイルは、十年来の友人である賭博場経営者モーガン(アンソニー・クィン)とワーロックへやって来る。だが、給料が安いので、博打でも金を稼ぐと、平然と言い放つブレイスデイルに、不信感を顕わにする住民もいた。それでも、酒場のひとつを賭博場に変えるブレイスデイルとモーガン。

そこに新任の保安官がやって来ると聞きつけたマックオウンらは、当然、自分たちの力を見せつけようと、町へやって来て・・・

複雑な展開で進行し、各々の人間性を際立たせる異色西部劇の佳作。

腕は立つが、どこかニヒルで、上から目線を漂わす新任保安官。そんな彼を陰日向となり、常にサポートし続ける古い相棒。

対峙するのは、平然と汚い手を使っても自分の権力を誇示しようとする牧童一家。

ただし、新任保安官は、荒れた町に平和を取り戻すと、やがて、その実力と権力から、市民たちに疎まれる存在になっていくことを自らが知っている。

それでも、そんな人生だけを繰り返して来た男だ。

このあたりは、普通の設定である。しかし、本作がいかに異色な展開を見せるかというと、悪党一家の手下のひとりであり、さほど目立たない設定であったウィドマークが、中盤から、主役の座をフォンダから奪い取るのだ。

これには驚いた。しかも、フォンダとクィンの関係にも何やら秘密があり、更に二人を昔から知る女性が絡んで来て、二人に憎悪と侮蔑の目を向ける。

一方で、フォンダを信用のおけぬ要注意人物と思っていた女性が、彼の意外性を知り、心動かされていく。

何とも、登場人物たちの人間性が複雑に交差し、様々な過去や、それにより受けた影響が浮かび上がって来る展開で、目が離せなくなる。

作劇進行としては、観客側に、ある程度、情報を与えておいて、先読みなりの真偽を試させる展開もある。

それは劇中の町の住民も同様である。観客同様、相手の容姿や立ち振る舞い、言動などから、自分の価値感で決めてしまう。

本作も、まさに、こちら個人の力量に挑戦してくるのである。

情報とは、単なる「噂」に尾ひれが付くものだと思わせたり、否や、やはり、火のないところに煙は立たぬ、という信憑性の双方を描き、それに翻弄されるか個人の意志を貫くのかで、それぞれの人間としてのスタンスが浮び上がる。

いつの間にか、安心して住める町を願うが、所詮、他力本願であり、自分はセイフティー・ゾーンにいながら、それでも、己の価値観と正論を心に持つ住民になった心持ちにさせられる。

名優と認知されているフォンダの演技は当然のことだが、ウィドマークとアンソニー・クィンの、それまでは、どこかいつも脇役というイメージが払拭され、実に上手い性格俳優なのであると認知出来よう。

全員が分をわきまえた演技で、所詮、フォンダの脇役だろうという、事前の刷り込みによる主要キャストの存在が、途中から、どんどん変わっていく展開は、どこかミステリー風でもあり、それでいて西部劇ファン心理をくすぐるガン・ファイトもある。

監督は「赤狩り」でハリウッドを追われていたエドワード・ドミトリク。社会派の監督であり、本作も「真昼の決闘」(1952)に代表される社会派西部劇の系譜と受け取れる。

成程、町を安定させ、やがて疎まれる保安官の立場は、ゲーリー・クーパーの役どころに重なる。

要は、アメリカン・デモクラシーの中で、我関せずというエゴイズムをあぶりだすという複雑な意匠で進行し、落とし所も納得できる異色西部劇。

良く出来ている。

余談雑談 2014年4月19日
東京は寒の戻りか、肌寒い。暖かさに慣れた身体には堪えるが、後10日もすると黄金週間である。 去年の今頃は沖縄に行っていた。今年は、ベータのデッキを買い直したり、酒場より高いイタリアンに顔を出したりと、日常の無駄遣いが増え、今のところ、近郊ど