スタッフ
監督:ラモント・ジョンソン
製作:ジュールス・レヴィ、A・ガードナー、A・レイヴェン
脚本:ウィリアム・ノートン
撮影:マイケル・リード
音楽:リズ・オルトラーニ
キャスト
コナー大尉 / ブライアン・キース
シュレーター大尉 / ヘルムート・グリーム
ペリー少佐 / イアン・ヘンドリー
カー将軍 / ジャック・ワトソン
コックス伍長 / パトリック・オコーネル
ノイチ少尉 / ホルスト・ヤンセン
ウルフ中尉 / アエレキサンダー・オールソン
クランツ大尉 / ジョン・アビーネン
ホール少尉 / コンスタンティン・グレゴリー
日本公開: 1971年
製作国: イギリス レヴィ、ガードナー、レイヴェン・プロ作品
配給: ユナイト
あらすじとコメント
今回も脱走モノ。しかも、ドイツ軍が収容所から逃げる内容だ。有名作ではないが、ソツなくまとまった地味ながらも捨てがたい作品。
スコットランド、中部某所イギリス軍が統治するドイツ兵専用のマッケンジー捕虜収容所。
ドイツでイギリス軍捕虜25名に手錠をかけたという条約違反のため、対抗手段として、こちらでも同じ人数に手錠をかけようとしていた。しかし、捕虜側のシュレーター大尉(ヘルムート・グリーン)らは、徹底抗戦に打ってでた。
何かに付け、反抗的な行動を取る捕虜たちに業を煮やした上層部は、性格に問題のある新聞記者上がりで情報部所属のコナー大尉(ブライアン・キース)に、動向を調査せよと命令を下した。面白くないのは収容所所長のペリー少佐(イアン・ヘンドリー)だ。しかし上の命令とあれば従うしかない。
そんな所長を横目に、コナーは手錠をかけるために、消防車を要請。何と放水して鎮圧を図ろうと画策していたのだ。そこに、味方捕虜の手錠が外されたとの情報が入る。
しかし、コナーはそれを無視し、計画を実行する。驚く所長であったが、コナーには別の目的があった・・・
脱走計画の遂行と阻止を巡る駆け引きを描くアクション作。
600人の陸海空軍のドイツ兵捕虜。束ねるのはUボートの元艦長で英雄である。外部と暗号文を散りばめた書簡で脱走計画を練り、ヒトラーの命令とばかりに、Uボート乗組員のみ27名を脱走させようとする。
当然、他の陸空軍兵は面白くない。中には、敵意を剥きだしにする者までいる。それらを力づくで抑え込もうとするタイプだ。
一方で、計画詳細を調査するべく派遣されたイギリス情報部の大尉もかなりの曲者。
勤務中に女性下士官と関係を持ったり、絶対服従である軍規を平気で破ったりするアイルランド人だ。
すぐにお互いが腹の探り合いを始め、同じようなにおいを放つ相手に敵対心を覚醒させる。
果たして無事に脱走は成功するのかというサスペンスを描いて行くのだが、主人公二人が、両方とも曲者で単純にどちらかに肩入れ出来ないという、どこかシニカルな設定である。
当然、双方とも、失態を起こしたりしながらの展開。脱走計画そのものはトンネルという、ありがちの設定なので、脱走そのものよりもドイツとイギリスという国民性の差異を見せつつ、主人公二人の性格が他とは違ってかなり「いびつ」というポイントを軸に引っ張っていく。
確かに、ドイツ軍同士でも、リーダーがことさらUボート乗組員だけを最優先させようとするあまり、空陸という、同国人との間で内紛が起きたり、一方のイギリス側にしても、主人公が変わり者のアイルランド人だし、規律を重んじる所長との軋轢や、警察といった民間との協力が上手くいかないという、興味深いというか、今まではスルーしていたポイントを描くことで、映画としてのメリハリを付けている。
ただ、キャスト全体が弱く、サスペンスが数珠繋ぎというスピード感もない。それを補おうとワイプやオーバーラップという画像テクニックを挿入したりしてはいるが、それでも、どこか繋がりが悪い。
既に第二次大戦下の『脱走モノ』は多くの作品が輩出されていたので、脱走方法の奇想天外さや収容所内のドラマと脱走後の描き方など、目新しい題材や展開を探すのは大変なのだろう。
しかも、イギリス製という地味さが勝るという印象。それでも、この当時に製作された映画としては、中々、上手くまとまっている作品であり、戦争に於いて完全なる勝者などいないというシニカルさも印象的。