オフサイド7 – ESCAPE TO ATHENA(1979年)

メルマガ会員限定

画像を表示するにはメルマガでお知らせしたパスワードを入力してください。

スタッフ
監督:ジョルジュ・パン・コスマトス
製作:デヴィッド・ニーヴン jr、ジャック・ウィナー
脚本:ジョルジュ・パン・コスマトス、リチャード・S・ロクト
撮影:ギルバート・テイラー
音楽:ラロ・シフリン

キャスト
ヘヒト少佐  / ロジャー・ムーア
ゼノ  / テリー・サヴァラス
ブレイク  / デヴィッド・ニーヴン
エレアナ  / クラウディア・カルディナーレ
ドティ  / ステファニー・パワーズ
ダン  / エリオット・グールド
ジャッドソン  / リチャード・ラウンドツリー
ロテッリ  / ソニー・ボーノ
フォルクマン少佐  / アンソニー・ヴァレンタイン

日本公開: 1980年
製作国: イギリス ITC・エンターテイメント作品
配給: 東宝東和


あらすじとコメント

今回も脱走モノ。ただし、単純な脱出劇ではなく、レジスタンスが暗躍する、些か変わった意匠で繰り広げられるアクションあり、コメディありの娯楽活劇作。

ギリシャ、某島第二次大戦末期の1944年、ドイツ軍管理下の捕虜収容所。所長はオーストリア人で、戦前はスイスで古美術商を営んでいたヘヒト少佐(ロジャー・ムーア)。

しかし、この収容所は異質で、古代ギリシャの財宝発掘及び確保が目的の場所でもあった。

捕虜には、イギリス人考古学者のブレイク教授(デヴィッド・ニーヴン)、アメリカ軍のジャッドソン(リチャード・ラウンドツリー)、イタリア人コックのロテッリ(ソニー・ボーノ)など個性派が揃っていた。そこに新入りとして慰問団の芸人デイン(エリオット・グールド)とダンサーのドティ(ステファニー・パワーズ)が送られてきた。

ディンは脱走計画があるのだろうと探りを入れるが、そんなものは何もない。戦争も終盤であり、もう少し誤魔化しつつ待てば、解放の日は近いと思っているようだ。

一方、町ではレジスタンスの闘志ゼノ(テリー・サヴァラス)が恋人エレアナ(クラウディア・カルディナーレ)の経営する売春宿で、密かに一大計画を練っていた・・・

美術品盗掘と欲に目がくらんだ人間らが織り成す娯楽アクション。

クセモノ揃いの捕虜に、更にクセモノの収容所所長。真面目なのはギリシャ人のレジスタンスと非情なナチスの将校という構図での進行。

先ず、主役であるドイツ軍収容所所長がオーストリア人である点がミソ。要はドイツ人ではないので、軍や国家に対しての忠誠心など皆無な人物。

軍の命令で古美術品を盗掘し本国へ送ろうとしているが、真に価値のあるものは横取りし、スイスの自宅へ転送させているような男だ。

当然、アメリカ慰問団の美女が送られてくると、すぐに口説くタイプ。

どうにもムーアが演じていたジェームス・ボンドを連想させる設定である。デヴィッド・ニーヴンは、ギリシャの島で大爆破が起きるといえば「ナバロンの要塞」(1961)を想像させるし、途中、エリオット・グールドによるオートバイでのチェイスなど「大脱走」(1963)をイメージさせる。

更に、極め付けなのは、収容所モノの走りにして佳作、ビリー・ワイルダー監督作「第十七捕虜収容所」(1953)の完全なるオマージュが登場すること。

何せ、収容所名は『第17収容所』だし、同作でアカデミー主演男優賞を受賞したウィリアム・ホールデンが同じ役で登場するのには爆笑してしまった。

何と、本作へのホールデン出演は、ワイルダー監督の「悲愁」(1979)で、ギリシャにロケに来ていた合間のカメオ出演なのが、更に笑わせる。

余談だが、ワイルダーは粘る演出でも知られ、暇を持て余す役者も多く、「フロント・ページ」(1974)撮影時では、ウォルター・マッソーが「大地震」(1974)にカメオ出演している。

監督はギリシャ出身のジョルジュ・パン・コスマトス。「カサンドロラ・クロス」(1976)や「ランボー/怒りの脱出」(1985)、「リバイアサン」(1983)など、意図は分かるんだけどな的作品が多い。

本作も低迷期のイギリス映画らしく、設定自体には妙があるが、どこか大雑把な印象である。

アクション場面などは結構派手で楽しめるのだが、だからこそ、編集の繋ぎ方や、サスペンス・シーンの盛り上げ方、コメディ要素のバランスなど、気を遣えなかったのかと感じ、どうにも散漫な印象が勝った。

俳優陣も、一応、豪華ではあるが、盛りは過ぎているか、TV俳優という感じがする。

往年のイギリス冒険映画が好きな人間からすると、設定や筋運びは面白いのだから、もう少し違った作劇ができないかと、何か胸に異物感が残る作品。

余談雑談 2014年7月19日
いやはや困った。 この一年近く、左眼の視力が落ちていた。寄る年波で、老眼が進んでいるんだなと。まあ、もう片方は問題ないし、老眼鏡を作り直すのは金がかかると誤魔化していた。 そうしたら、先立て、右眼も何だかシャープさが薄れてきた。これは流石に