スタッフ
監督:アンドリュー・V・マクラグレン
製作:エリオット・カストナー
脚本:ジャック・ディヴィス
撮影:トニー・アイミ
音楽:マイケル・J・ルイス
キャスト
フォークス / ロジャー・ムーア
クレーマー / アンソニー・パーキンス
ブリンスデン提督 / ジェームス・メイソン
シュルマン / マイケル・パークス
キング / デヴィッド・ヘディスン
オラフセン船長 / ジャック・ワトソン
フレッチャー / ジョージ・ベイカー
サナ / リー・ブロディ
首相 / フェイス・ブルック
日本公開: 1980年
製作国: アメリカ E・カストナー・フィルム作品
配給: UIP、CIC
あらすじとコメント
今回もロジャー・ムーア主演のアクション作。それまでの彼のイメージが払拭された役柄の作品を選んでみた。こじんまりとした「ジャガーノート」(1974)的だが、そこそこ見られる娯楽作でもある。
ノルウェー、スタヴァンガー北海洋上に浮かぶ油田基地へ物資を運ぶ貨物船に、クレーマー(アンソニー・パーキンス)ら、6人の報道陣が取材のため乗船して来た。
洋上にでると、すぐに彼らは態度を急変させ、乗務員を人質に取った。続いて、仲間らが潜水し、油井塔と油田基地そのものに爆弾を仕掛けてしまう。クレーマーは、薄ら笑いを浮かべ、ジャックした貨物船に乗船したまま、起爆スイッチを設置し、イギリス政府に身代金500万ポンドを要求する。
政府はすぐさま海軍や、特殊部隊の派遣を検討するが、洋上油田基地の奪還など、想定外で不可能と判明。だが、大手保険会社の情報により、民間人であるが海軍出身のフォークス(ロジャー・ムーア)率いる特殊潜航部隊の存在を知る。
首相は可能性が少しでもあるのならと海軍将官のブリンスデル(ジェームス・メイソン)を派遣した。ちょうど一ヶ月前から、油田基地奪還のシュミレーションを練っていたフォークスは、依頼を受諾する。
タイム・リミットが刻一刻と迫る中、彼が立案した計画とは・・・
洋上の貨物船をメインにスリリングな展開を見せる娯楽アクションの快作。
冷たい荒波の洋上に屹立する油田採掘基地。そこに爆弾を仕掛けられたら、海上か海中からしか近付けない。しかもテロリス・グループ側は練った計画に則って行動しているので、上手い打開策を考え付かない政府側。
そこに持ってきての主人公の登場。しかも、かなりの『変わり者』。大の女性嫌いで、大酒飲みで刺繍好き。権力者も何のその。
自分の確固たる信念が、他人にどう思われようとお構いなしというタイプ。有能な女性秘書や海軍将官をも説き伏せる。
例えば、犯人側が仕掛けた爆弾は、人間が解体しようと触れたら爆発するタイプ。主人公も当然、その手の爆弾を仕掛けていると見抜き、そこを逆に利用しようとする。
いかにも頼りになるという風情だし、計画立案や窮地での機転など、実力があり、文句が言えない。
しかし、テロ・グループは貨物船にいて、人質らと通信すら勝手にできない状況だ。
こちらは、テロリスト側も主人公同様、かなりの切れるタイプ、且つ、冷酷と刷り込まれているから、直接対峙するときは、どんな展開になるかとワクワクさせられる。
アクションもあるが、心理戦がメインで腹の探り合い的進行。当然、互いに一難去ってまた一難という展開である。
一方で、捕えられた貨物船の乗組員側も、何とか打開策を考え、テロリスト相手に勝手に動こうとするし、それによって想定外の災難が起きたり、逆に、主人公の窮地を救ったりと、サスペンスも上手く機能している。
監督はヴェテランのアンドュー・V・マクラグレン。西部劇からアクションとこなしてきた監督であるが、この時期は、やたらと「パート2」モノのどうにも萎える作品群を輩出していた時期。
なので、本作もまったく期待せずに、当時、鑑賞したが、中々どうして、監督の最後の輝きを放つ作品に仕上がっていて驚いた。
ただし、過度な期待は禁物。所詮、映画低迷期の作品であり、往年のキレのあるスピーディな展開を望んではいけない。
終盤のアクションも、派手ではないし、ストーリ的整合性にも疑問符が付くところもある。
要は、脇が甘い作劇。それでも、当時としては、派手なアクションだけに頼らない、サスペンス要素をうまく取り込んだスマッシュ・ヒットと認知する。