一挙に秋めいてきた東京。先立て、いささか深酒した翌朝、寒さで目が覚めた。
飲酒時に殆ど食べなかったので、何か食べた方が良かろうと思い、近所の、着席式だがイメージは立ち食いソバ屋というチェーン店が思い浮かんだ。
下町の6時台という時間帯だからか、駅の直近にも関わらず、スーツ姿のサラリーマンなど、ひとりもおらず、個人宅配業者に、何をしているか計りかねる、ちょっと不思議な男。建設現場にでも行くのかというがっしりした体型の若者。夜勤明けか、ビールとつまみに天ぷらを頼む中年男などがカウンターに。
24時間営業の店で、そこの深夜勤務専門なのであろう従業員二名は、ともに70代前後の男性。
ガラス張りの店で、こちらから見ると外を歩く人影もまばら。何だか、地元ではなく、どこか旅先で、羽目を外した翌朝の後悔を感じるような地方都市的な、昭和を覚醒させる空気感。しかも、南国ではない場所。
それに拍車をかけるのが、久々に聞く、FMではないラジオの交通情報。DJも、流暢な英語など使用しない。
そういえば、今年は東京23区から一歩も出ていない。沖縄に、今月あたり出向こうかと画策していたが、諸般の事情により中止と相成った。
そんな寂寥感も重なったのか。しかし、何故か妙な安心感も覚えた。昔は、温泉やら、グルメ旅と称して沖縄以外にもあちらこちら旅をした。
そんな時代が蘇った。不意に迎え酒をしたくなったが、流石に身体が、うんと言わなかった。
外に出ると、再び秋の気配を感じた。何とも懐かしさと妙に旅情をそそられた二日酔いの早朝。