物騒な世の中になったもんだ。一日で二度も警察沙汰に直面した。
一件目は、フリーランスとして出入りする某編集部でのこと。職業柄か、正社員たちは出社が遅い。こちらは、朝型なので顔を出すときはいつも人は、まばらである。
その日も午前中に行ったら、編集部の入っているビルのフロアが散乱していた。中には正社員がひとり。すぐにこちらへやって来て、実は、と。
何でも、若手の社員が、出勤途中に路上で迷惑行為をしていたホームレスを咎め、スマートフォンで写真を撮る真似をしたらしい。それで、後をつけてきて、廊下で暴行に及んだとか。すぐに警察が呼ばれ、両名とも警察へ行った直後に、顔を出したようだった。
当然、その日は、その話で持ちきり。何とも、仕事どころではなかったが、当事者は軽傷で済み、無抵抗だったため数時間後に帰社したが、今度は警察による現場検証。
検証に立ち会った、その若手は、見るからに、か細いオタク・タイプ。大声で話したり、笑ったりする姿を見たことがない青年である。
そんな彼が、迷惑行為を咎めるタイプだとは夢にも思わなかった。人は見かけによらぬと思ったが、彼は以後、他人を注意することは控えると苦笑いしたのが印象的であった。
そして、二件目。夕方、地元に戻り、さて一献と思って酒場に入った直後。
携帯に母親から着信。慌てた声で、タバコ屋で窃盗被害に遭ったと。
タバコふた箱をカウンター越しに奪い逃走し、「泥棒!」と叫んで外へ出たら、仕事上がりの解体現場の若い二名が追いかけて捕えてくれたと。で、今から交番で事情聴取と相成る模様で、当然、慌てている。
すぐに交番に駆け付け、調書を書いている母親と対面した。窃盗犯は、本署へ連行されたらしいが、30代半ばぐらいで、地方から出てきたが、仕事がなくムシャクシャしていたと。
まあ、商品は戻ったし、仕返しも怖いので、被害届を出さず、寛大な措置をという旨の上申書を書くことに。
ところが、交番の巡査は、書式や内容文面に気を遣うが、どうにも不慣れ。お役所仕事なので、誰も読みはしないが間違いがないように状況を書かせようとするが、こちらからするとまったく文章の態を成していない。
仕事柄、文章には気を遣う自分。僭越ではあるが、何とか辻褄の合う文章になるように誘導してしまった。
しかし、何とも、忙しい日であった。