スタッフ
監督:ピーター・ハイアムス
製作:モッシュ・デアマン、ハワード・ボールドウィン
脚本:ジーン・クィンターノ
撮影:ピーター・ハイアムス
音楽:ジョン・デブニー
キャスト
マッコード / ジャン・クロード・ヴァンダム
フォス / パワーズ・ブース
副大統領 / レイモンド・J・バリー
エミリー / ホイットニー・ライト
タイラー / ロス・マリンジャー
ホールマーク / ドリアン・ヘアウッド
ヒッキー / マイケル・R・オーベル
スクラッチ / ジャック・アーディー
カーラ / フェイス・ミントン
日本公開: 1996年
製作国: アメリカ シグネチャー、コーエン作品
配給: UIP
あらすじとコメント
前回の「逆転」(1963)は、まるでヒッチコック作品かと見まごう映画だった。そこで、今回も「まるで・・のよう」的作品を選んだ。悪く言えば、パクリなのだが、それでも割と面白い作品。
アメリカ、ペンシルベニア北米プロ・アイスホッケーのプレーオフ・トーナメントの開催当日。
大会会場の消防管理責任者マッコード(ジャン・クロード・ヴァンダム)は、観戦チケットが二枚手に入ったので、離婚した妻の元へ行き、息子と娘を誘った。規約違反だと怒る元妻だが、子供たちは地元チームの決勝戦なので興味津々。仕方なく同行を許可した。
一方、会場は副大統領(レンモンド・J・バリー)が来場するため、シークレット・サーヴィス本部長ホールマーク(ドリアン・ヘアウッド)らは、厳重警備体制を敷いていた。
そんな中、フォス(パワーズ・ブース)をリーダーとする非情なテロリスト集団が、綿密な計画の元、会場に入り込み、副大統領らを貴賓室に軟禁してしまう。すぐさま、フォスは政府に対して17億ドルという法外な要求をし、目的が達せられない場合は、スタジアム全体を爆破すると言い放った。
しかも、偶然、事件を知ったマッコードの娘が仲間に拉致され、貴賓室に連れ込まれる姿を見た彼は・・・
ピーター・ハイアムズ監督の気骨を感じる娯楽アクション作。
副大統領や市長を人質に、アイスホッケー試合の決着までに全額送金を要求するテロリスト集団。
アイスホッケーとは、20分を「1ピリオド」とし、休憩15分が入り、3ピリオドで勝敗が決するスポーツ。つまり、合計90分以内に17億ドルを送金完了しなければ大惨事が起きるという内容。
テロリスト側は、冒頭から次々と無慈悲に人を殺していく集団として描かれる。愛娘も副大統領と一緒に軟禁され、無鉄砲にも単身戦いを挑んでいく主人公。
しかも、二年前に小さな女児を火災現場から救出できず、精神を病んで離婚し、現場ではなく「管理官」というポジションに甘んじている男だ。
そんな主人公が、なぜか武術に長け、身近なもので武器を作成し、テロリストらを次々と血祭りに上げていく。
精神を病んでいるから、テロリスト同様、平気で人間を殺害できるのか。しかも、厨房の料理道具、練習用ジムのトレーニング器機などをフルに使っての殺害である。
ストーリィは完全に「ダイハード」(1988)のパクリにして、主人公が超人的体力の持ち主という設定は、自分のマーシャル・アーツを披露したい、「沈黙の~」シリーズで有名なスティーヴン・セガールが好んで演じるタイプだ。
しかも、妹の拉致を知らない長男には「ビルが爆発しても、ここを動くな」という、自虐的台詞まで登場してくる。
かなり強引な展開は、いかにもB級的だし、ご都合主義も満載。
では、つまらないかというと、さにあらず。それはハイアムズ監督自身の手持ちカメラによる緩急の付いた撮影と、自分で編集する見事なカッティングの繋ぎ方に起因するところが大きい。
元々、好きな監督でもあるので、思い入れも強いのだが、個人的には「ダイハード」より、本作に軍配を挙げたい。
非道には非道、それが笑いを誘発することを知った上で、わざとコメディ色を強める場面もあり、派手な爆発シーンやら、群衆パニック・シーンまで盛り沢山な娯楽アクションの快作である。