スタッフ
監督:メル・ブルックス
製作:メル・ブルックス
脚本:メル・ブルックス
撮影:ウディ・オーメンス
音楽:ジョン・モリス
キャスト
モーゼ、コミカス、ルイ16世 他 / メル・ブルックス
シーザー / ドム・デルイーズ
ニンフ皇后 / マデリーン・カーン
モネ伯爵 / ハーヴェィ・コールマン
マダム・デファルジュ / クロリス・リーチマン
ジョセファス / グレゴリー・ハインズ
スイフタス / ロン・ケリー
イエス・キリスト / ジョン・ハート
ナレーター / オーソン・ウェルズ
日本公開: 1984年
製作国: アメリカ クロスボー・ピクチャー作品
配給: 20世紀フォックス
あらすじとコメント
前回の「魔法にかけられて」(2007)は、セルフ・パロディながら、洒落た作品だった。今回は、歴史をかなりキツいタッチで描いたパロディ作品を選んでみた。
2000万年前の地球類人猿から進化した人間は、やがて、石器時代を迎えると洞窟に絵を描く人間(メル・ブルックス)が現れた。いわゆる「芸術家」の誕生でもあった。すると、その絵に関して云々言う人間も登場。これが、後の「批評家」という職業。
時は移ろい、原始時代。石器による武器が開発され、それにより「狩り」を覚えた人間は、結婚のために女性をも獲物として狩猟するようになった。しかし、当時から、男性が男性を奪い、結婚する者まで登場していたとは驚きだ。
そんな中、人間の悲鳴が面白いと感じた者は、わざわざ石を足に落とし、楽しむようになる。独りよりも数名にする方が面白いと感じたので、数人を並べて石を落す。いわゆるこれが「音楽」の誕生であり、指揮者のオリジナルとなった、とか。
やがて、時代は流れ、神の啓示を受けたモーゼ(メル・ブルクス)は・・・
人類の誕生からローマ時代にかけて、人間が歩んだと思われる歴史をギャグ満載で描くコメディ作品。
類人猿から人間となり、原始時代を経て、旧約聖書、ローマ帝国、スペインの宗教裁判、フランス革命までが描かれる。
とはいっても、日本の歴史すら不得手な自分としては、外国の歴史など、皆目わからないまま人生を過ごしてきた。
なので、その時代の特性や、人物像や相関関係などを理解していないので、本作で描かれる何割かは、その面白さを理解できていないとも感じる。
しかも、メル・ブルックスらしく、かなり強引で、強烈な描き方も登場するので、微妙な感覚に陥ることもあった。
ただ、冒頭の人類が初めて二本足で立つ場面は、キューブリックの秀作「2001年宇宙の旅」(1968)を完全にパロディにしたものだし、預言者モーゼの「十戒」も、本当は「十五戒」だったのが、彼のミスで「十」に変更になったといった冒頭は、映画ファンなら、オリジナルの挿話も、流石に、それぐらいは知っているぞという態で進んでいくので、飽きることはなかった。
駆け足的に人類の進化を展開させ、腰を据えて描かれるのは『ローマ帝国』。ただ、そこでも下品なブルックス節が炸裂するので、苦笑いを禁じ得なかった。
どうにも、欧米のコメディのツボは自分とは違うと痛感させられる。その上、単発ギャグと時間をかけて描かれるシークエンスのバランスが、統一性を打ち消しているとも感じた。
尤も、こちらの歴史不勉強の所為だろうが。
ただ、緩衝剤的に描かれる「スペイン宗教裁判」のシークエンスは最高。ブロードウェイの一幕的ミュージカルとして登場するが、なんとも、楽しく、楽曲や群舞シーンも素敵。
果ては、エスター・ウィリアムスの水中ミュージカルそっくりの場面まででてきて、ニンマリしてしまったが、歌詞や内容はあくまでも、シュールなのである。そのギャップが、また、楽しい。
しかし、それからフランス革命になると、またトーン・ダウンしてしまうのが残念。
やがてラストを迎えるが、そこもコメディとはいえ無理矢理という印象。
ただし、そういった強引さこそがブルックスの真骨頂かもしれないし、作られはしなかったが、『パート3』の予告までついている。
そのラストに登場する予告編部分が興味深いのは本作の続編ではなく、別な作品として、それぞれが本作以降に個別制作されたのだから面白い。
そこにブルックスが次々と作品を輩出できた力量を嗅ぎ取れるだろう。