近所に不思議な店が出来た。ハイボールとシャンパンを出す下町酒場とか。場所柄、立飲みハイボールの店などは珍しくも何ともないが、『シャンパン』である。
当然、シャンパンと呼べるのはフランスのシャンパーニュ地方で生産された物のみを指す。それ以外は『スパークリング・ワイン』なり、別な名称で呼ばなければならない。もし、看板に偽りなしなら、かなり異色だ。
ところが、どうにも店の作りに、食指が動かされないのだ。ガラス張りなので、外から中が良く見えるが、アイディアも、こだわりも感じさせない、要は、何も考えていない、安普請の店内。ベタベタと壁一面に、黄色い紙の手書きメニューが貼られ、値段が書いてある。
外からメニューを見てみたが、ハムカツやら、厚揚げ、マカロニサラダといった、完全に居酒屋メニューしかない。そこに「シャンパン ボトル4000円」。
一体、誰がそんなメニューでシャンパンを楽しむのだろうか。しかもシャンパン一杯幾らという表示がない。ワインは、グラス赤白各350円と書いてあるのに。ボトルで買えということだろうか。
それにグラス・ワイン350円とは、どの程度のワインなのかは想像が付く。安酒場ばかりにしか行かないが、そこに、こだわりを感じさせる店が好きな自分としては、この勘が外れたことはない。
繁華街であり、有名観光地。飲食店の移り変わりは随分と見てきた。元々は、洋服屋や雑貨屋と様々に混在していたが、高齢化や世継ぎ問題で閉店し、再開店すると飲食店になっている。場所は、多くの人が行き交う一等地だ。
しかし、新規開店した飲食店の殆どは、どこか素人臭が漂い、一年と持たずに閉店していく。そして、すぐに次の飲食店が入る。それも、中途半端な価格とメニューで閉店。その場所は『死に場所』となっていく。
やはり、中途半端な意気込みと資本で、夢の飲食店業界へと参加して来ても、現実は厳しい。残るのは、大資本のチェーン店ばかり。
しかし、それすら撤退が始まった。一方、円安で滅法増加した外国人観光客。彼らは、一体何を楽しみに飲食するのか。
そうか、回転寿司か。しかし、自分は、それすら行かない。それこそ、インチキも多いし、それなりのネタを出す店は、それなりの値段もする。
ならば、シャンパンなど考えるだけで生意気ということだよな。