スタッフ
監督:セシル・B・デミル
製作:セシル・B・デミル
脚本:フレデリック・M・フランク、T・St・ジョン、B・リンドン
撮影:ジョージ・バーンズ、J・ベヴァレル・マーレィ 他
音楽:ヴィクター・ヤング
キャスト
ブレイデン / チャールトン・ヘストン
ホリー / ベティ・ハットン
バトンズ / ジェームス・スチュワート
グレート・セバスチャン / コーネル・ワイルド
エンジェル / グロリア・グレアム
フィリス / ドロシー・ラムーア
グレゴリー捜査官 / ヘンリー・ウィルコクスン
クラウス / ライル・ベドガー
ハリー / ジョン・ケロッグ
日本公開: 1953年
製作国: アメリカ パラマウント作品
配給: パラマウント
あらすじとコメント
今回もチャールトン・ヘストン主演作。監督は「十戒」(1956)で組んだセシル・B・デミル。とはいえ『歴史劇』ではなく、現代劇でサーカス一座を描く娯楽大作。
アメリカ、フロリダ1400人の座員を有するサーカス団の団長ブレイデン(チャールトン・ヘストン)は、小さな町を巡りながら最高のパフォーマンスを見せ続けたいと願っていた。
しかし、投資家たちは、赤字続きであるので、大都市のみで興行を打つように仕向けた。断固反対するブレイデンだが、情に訴える説得は難しい状況であると判断していた。何とか、年間興行で成立させたい彼は、サーカスの花形である「空中ブランコ」の名手グレート・セバスチャン(コーネル・ワイルド)を密かに招聘していた。
彼が居れば観客増員は間違いない。ただし、彼は私生活が破天荒で、トラブルが懸念される。それでも、ブレイデンは1400名のために契約を交わしていたのだ。しかし、そのことは、彼の恋人で、空中ブランコ乗りのホリー(ベティ・ハットン)の耳にも入ることとなった。自分がセンターだと思っていた彼女にすれば、青天の霹靂である。二人の中にも亀裂が生じそうだ。
何とか年間契約が成立し、遂にテント設営用の器材から、動物、全団員を載せた超大型連結列車が走り始めた・・・
豪華でスペクタクルに溢れるサーカスの世界とそこに生きる人間模様を描く秀作。
出演者から裏方まで1400名の人間と数百匹の動物。ファミリーと呼ぶには、あまりにも巨大な集団。公演先で建てられる巨大テント群の装備まで含めると、貨車20両を超える列車で全米を移動する。
出し物はすべて人間が演じる。死と隣り合わせの演目から、道化による爆笑譚。象やライオンから猿に至る、様々な動物たちには、冷や冷やさせられたり、笑わせられたり。
現代でいえばディズニー・リゾートが移動していくと想像すれば良いだろうか。その上、世界各国をイメージさせるパレードだってある。
そんな大掛かりなステージを二日間の昼夜公演で、すぐに装備をたたみ、別の地へと移動していく。
束ねるのは『サーカスの鬼』と呼ばれる男で、自分の恋よりも、サーカスを優先させるタイプ。
それだけの巨大集団であれば、当然とも思える。
一方、サーカスの花形でもある空中ブランコ演者の恋人が、自分が一番ではないのが気に入らない。自分だって死と隣り合わせで、スポット・ライトを浴びる側の人間だから。それでも、遊び人と解りきったライバルに心が動くのは、同じ『死と隣り合わせ』という立場だからか。
そんな三角関係に入り込もうとする象使いの美女。その美女に、ぞっこんの相手までいるから、ややこしくなる。
そういった人間模様とともに、実際に見物しているようなスペクタクル・ショーも見られるという贅沢な作劇。
華やかなサーカスの世界と、それを動かす人間たちのドラマ。
デミル演出も緩急が付き見事。サーカスを見に来ている観客の姿がインサートされるが、その一瞬に映しだされる老若男女の人間たちの背景まで想像つかせるのには魅惑された。
人間の驕りが起こす事故から、地元のヤクザとのトラブル、果ては、パニック映画のようなラストのスペクタクル・シーンなど、まったく長さを感じさせない。
出演者では、自身で空中ブランコを披露するベティ・ハットンに、終始、道化のメイクで押し通すジェームス・スチュワートが忘れ難い。
本作初見時は、自分も子供で、どこにスチュワートがでていたかも解らなかった。それでも、トランポリン上で、踊って歌っているのには驚いた。
サーカス同様、プロが、プロ意識を持って作った映画。
『ショウ・マスト・ゴー・オン』(何が起きても劇は続けられる)という業界用語があるが、本作は、まさにそれを痛感させてくれ、最後には、涙まで浮かぶ傑作である。