遠い国 – THE FAR COUNTRY(1954年)

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スタッフ
監督:アンソニー・マン
製作:アーロン・ローゼンバーグ
脚本:ボーデン・チェイス
撮影:ウィリアム・ダニエルズ
音楽:ジョセフ・ガーシェンソン

キャスト
ウェブスター / ジェームス・スチュワート
ロンダ / ルース・ローマン
ルネ / コリンヌ・カルヴェ
テイティム / ウォルター・ブレナン
ギャノン / ジョン・マッキンタィア
ルーブ / ジェイ・C・フィリッペン
ケッチャム / ヘンリー・モーガン
リューク / ローヤル・ダーノ
ニューベリー / ジャック・イーラム

日本公開: 1954年
製作国: アメリカ ユニバーサル作品
配給: ユニバーサル


あらすじとコメント

前回紹介した「地上最大のショウ」(1952)で、全編を通してピエロのメイクで押し通しながら、名演を見せたジェームス・スチュワート。アメリカの善人像を演じ続けた彼の少し意匠の変わった西部劇をチョイスした。

アメリカ、アラスカ1896年のこと。ワイオミングから、アラスカまで牛を運ぶウェブスター(ジェームス・スチュワート)と相棒のテイティム(ウォルター・ブレナン)。、

牛を牽き連れた彼らの船が、途中のシアトルに入港すると、道中、牛を盗もうとした仲間二名を射殺した罪で、待ち構えていた保安官に、いきなりウェブスターが逮捕されそうになった。しかし、ウェブスターは船内で逃亡を図り、偶然乗船していた美女ロンダ(ルース・ローマン)に助けられる。初対面なのに何故かと訝しがる彼であったが、背に腹は代えられぬ。

匿われて、何とか無事、アラスカに到着し、保安官らが待ち構えていないことにホッとして、意気揚々と牛を引き連れ、町なかを横断し始めるウェブスター。だが、道の真ん中で絞首刑を執行しようとしていた顔役ギャノン(ジョン・マッキンタィア)の邪魔をしてしまう。ギャノンは保安官でも判事でもないが、僻地ゆえに、政府の目が行き届かぬことを良いことに、自分がこの地の法律であると振舞う男であった。

当然、よそ者のウェブスターは、彼に目を付けられ・・・

自分のみの価値観で身勝手に行動する男を描く異色ウェスタン。

誰も信用しない男。長年一緒に旅を続ける相棒や、友人らしい仲間もいるが、あくまで自分本位。だから、途中で牛泥棒を図った仲間を平気で射殺するタイプでもあるのだ。

素直に感情移入できない主人公像。ストーリィは、アラスカの僻地から顔役に睨まれた挙句、国境を越えたカナダで金脈を探す人間らが住む場所に逃げだすという展開。

敵役は、やはり身勝手で、権力者に成り上がった男。相通じる『嫌な奴』という空気を嗅ぎ取り合って、すぐに敵対する。当然、権力者に分があるから、逃亡を図るのであるが。

そこに権力者も一目置く、船で主人公を助けた酒場を経営する男勝りの女と、勝気だが純朴な若い女の双方が、主人公に惚れるという三角関係的進行が加わってくる。

それでも、主人公は、全く他人の感情や心情を無視し続ける。

映画は、中盤からアメリカを離れ、カナダでの展開と相成っていく。

そこでは、それまでの描き方から、人間が『金探し』に携わることで、欲望を助長する姿が描かれていくのであろうことは、想像に難くないのではあるが、住人らは、身勝手で自分さえ儲ければ良いというタイプではなく、根は善良というか、至って普通の人々として描かれていく。

こういった点に本作の異色さを感じた。つまり、予想外の変調が起きるのだ。となれば当然、悪役になるのは、搾取側で、国を超えてやって来る顔役ということになる。

だが、そこでも、無学といえばそれまでだが、他人を信用せず、自分のことだけを考える主人公には、またもや因果応報がやってくる。

それまでの言動で、仲間たちを不幸に追い込んでいくのだから、こちらも、複雑な心境になる寸法である。

そんな主役を演じるのがジェームス・スチュワートなのだから、尚更だ。

気の良い仲間役を演じるウォルター・ブレナンも、いつも通り、キュートなオヤジという印象で、二人の絡みも微笑ましい。

ただ、二人の女がスチュワートに絡むのだが、その女性特有の強さがストーリィに起伏を生むのではなく、脆弱にしていると感じた。

折角、スチュワートらしからぬ役柄設定なのだから、もう少し単純に「寂しい男たち」それぞれの末路と希望というスタイルでも良かったのではないかと思った。

それでも、カナダの大自然をスケール感を伴って描くロケ場面など、流石のアンソニー・マン演出と唸る。

まあ、主役がスチュワートだから、身勝手な男が、やがて改心するのであろうという想像は付くが、そこに行くまでの演技が最大の見所だろうか。

スチュワートとマン監督の名コンビとしては、やや劣る印象があるものの、手堅さを感じる作品という印象。

余談雑談 2014年11月29日
11月も終りで、もうすぐ師走だ。ここにきて、懸案事項だったメルマガ用写真の収納先に動きがあった。 バック・ナンバー全てを公開設定にしており、何も考えずにプロバイダーの保存ボックスに、今までの写真を全部放り込んでおいたのだが、気が付くと、月の