今年も残りわずかになった。既に、帰省なり、旅行などに出掛けられた人も多いのだろうか。
こちらは、先週、今年最初で最後の旅行を堪能した。門司で一泊し、雪交じりの強風が残る中、列車を乗り継いで島根の温泉津温泉へ。
そのときに利用した山陰本線には驚いた。東京からほぼ出ないし、出掛けるときは飛行機という自分は、「特急」で「スーパー」と名が付く列車で二両編成が存在するとは知らなかった。一両が『指定席』で、片方が『自由席』。しかも単線である。
山間部を走り、代わり映えしない田園風景を抜けると、いきなり冬の日本海が飛び込んできた。その絶景には、思わず声を上げたほど。
それから温泉津駅に到着し宿に入った。旅館は築100年の木造家屋で、近隣は全部が10室程度の小規模な旅館十数軒のみの温泉街だ。時節柄だろうか、観光客は歩いておらず、地元の老婆たちが、ゆっくりと会話しながら、手押しカートに掴り、小雨の中を歩いていた。
どこか原風景というか、まだこの風情が残っていたかと感無量になった。多くの渋い神社があり、佇まいも周囲の風景に溶け込んでいるし、狭い道路が一本あるだけの温泉街には、通りを挟んで二軒の源泉かけ流し公衆浴場がある。
土産物屋は一軒のみで、食堂もラーメン屋もない。若い人がやっているらしい、木造家屋をそのまま使用したカフェとバーはあった。
ところが、その宿の食事が酷かった。前日は、風雨が強く海上は大時化だったからか、魚がメインと謳う宿であったが、出てきた魚はどこ産で、いつ捕れたものかと疑う代物。しかも、それは翌日も続いた。
そこで、ランチは別な場所に移動して探そうと。思いついたのが『石見銀山』。車ではないので、バスか電車で向かうしかない。聞き及んではいたが、双方とも一時間に一本程度の運行本数。
どうしたものかと宿のご主人に相談したら、交渉してくれて割引運賃でタクシーに乗れた。実施に行ってみると、前日に雪が降ったらしく、観光客は、温泉街同様、ひとりもいない。メインである銀山跡はクローズ。
古い町並みをざっと流したが、印象としては、景観は素晴らしいが、各店舗は、どうにも地元の方が長年やっている風情でなく『ハッタリ感』が漂う。なので、30分後にはバスに乗った。
で、バスから電車に乗って温泉津に戻ることに。仕方なく乗り換えの駅前で店を探したが、喫茶店が二軒のみで、見知ったチェーン店やファスト・フードもない。やはり、昼間は外で食べる習慣がないのだろうなと感じた。
それでも、有名観光地とは違う、生活感が漂う場所で異邦人として佇むという旅の目的は果たせた。
最終日は、出雲大社に行ったが、強烈な寒波団か、結構な雨の所為か、ここでも信じ難いほど観光客が少なかった。
天気同様、めまぐるしく印象が変わる旅であったが、一日ずれていたら、列車や飛行機も止まっていた段階で、幸運を使い果たしたのかも知れぬ。
それでも、また来たいと願わずにはいられない場所の数々であった。実際に旅の話をした、ここの読者兼友人から、来年にでもよろしくと言われている。
となると、また本を出さないといけないが、そんなに上手く「柳の下」的に行くかなァ。
さて、これにて今年は最後の配信です。どうぞ読者の皆様、心穏やかな年末年始をお過ごしください。