あの高地を取れ – TAKE THE HIGH GROUND(1953年)

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スタッフ
監督:リチャード・ブルックス
製作:ドア・シャリー
脚本:ミラード・カウフマン
撮影:ジョン・アルトン
音楽:ディミトリ・ティオムキン

キャスト
ライアン軍曹 / リチャード・ウィドマーク
ホルト軍曹 / カール・マルデン
ジュリー / エレイン・スチュワート
トリヴァー / カールトン・カーペンター
ジェイミソン / ラス・タンブリン
ケイリー / ジェローム・カートランド
ナグラスキ / スティーヴン・フォレスト
ドーヴァー / ロバート・アーサー
オッパーマン軍曹 / バート・フリード

日本公開: 1955年
製作国: アメリカ MGM作品
配給: MGM


あらすじとコメント

今回も新兵を教育する訓練所を舞台にした中年男と若者たちのドラマ。前回の「ハートブレイク・リッジ/勝利の戦場」(1986)と見比べると、時代性がハッキリとわかる作品。

アメリカ、テキサス1953年の陸軍フォート・ブリス歩兵訓練所。

朝鮮戦争で武勲を立てたライアン軍曹(リチャード・ウィドマーク)は、非情なまでの『鬼軍曹』と呼ばれていた。今日も、新たに民間の若者たちが一人前の兵士になるべく入隊してきた。そんな彼らを見て、ライアンは、いきなり、新入りたちを罵倒した。皆、驚くが、彼は当然という風情であった。

そんなライアンをサポートするのは、私生活でも友人のホルト軍曹(カール・マルデン)だが、暴走しがちな彼を訝しく思っているフシもある。

新兵たちの訓練が早速始まった。神経質で真面目な男や、お調子者、先住民だと卑屈になっている者など、多彩であったが、ライアンは個人の価値観などお構いなしに、厳しく対応した。当然、彼らは鬱憤が溜まる一方であり、唯一の息抜きは町への外出である。

ある晩、外出許可が下り、町に繰りだすが、ライアンやホルトも同様に外出してきた。新兵たちは、ライアンらから逃げるように店を変えると、そこで美人だが、アル中のジュリー(エイレン・スチュワート)と知り合う。

年上で妖艶な彼女からの誘いに、新兵たちは・・・

屈折した感情を閉じ込めながら鬼教官として生きる男の心情を描く人間ドラマ。

戦場で生死を賭して上げた武勲が忘れられず、すぐにでも戦場に戻りたいと「移動願」を書き続ける主人公。

仲間たちは逆で、死ななくてすむ後方活動のままで良いと思っている。

主人公と同僚たちの間に横たわる、埋めがたい溝。故に主人公は、孤立し、己にも他人にも厳しく接している。

そういう教官に当たった新兵たちは堪ったものではない。そこに、兵士である亭主を亡くした妖艶な美女が絡んでくる。

彼女に素直に惹かれるのは、主人公の副官である。ところが、その未亡人が主人公の心の機微を見抜いたことから、鬼教官の心情に変化が訪れるという内容。

鬼教官という昼間の顔と、もしかして普通の感情を持つ人間ではないかと悩むプライベートの顔。

戦場に戻れないジレンマから、他人に非情に振る舞うのか。自問自答しながら、思い悩む主人公。

新兵たちにもそれぞれのドラマがあり、人生の経験値がないゆえ、精神的に自分を追い詰めていく者もでてくる。しかし、問題が起きれば連帯責任であり、主人公の所為ともなる。そこで、未亡人の言動が効いてくるのだ。

人間それぞれの成長と挫折を描く作品であり、戦場での戦闘はでてこない。そこにこそ本作の妙味があるのだが、逆に弱点をも晒していると感じた。

要は、男の登場人物は、全員が兵士でありながら、その後の人生が垣間見られないのだ。

訓練を受け、一人前の兵士に成長はする。やがて卒業し、また、新たな新兵が入ってくるというスパイラルである。

しかし、作られるのは『兵士』であり、戦場に行けば、生死にかかわる。恐らく、本作で描かれる新兵たちは、戦場では死を賭けても立派な武勲を立てる兵士になるであろうと想像させる。

どうにも胡散臭いプロバガンダを感じた。第二次大戦に勝利し、6年後に起きた朝鮮戦争。

アメリカが初めて負ける戦争でもあった。制作されたのは、1953年の朝鮮戦争末期。だからこそ、勝つために若者よ戦場へ向かえと、遠回しに描いた戦意発揚映画と感じざるを得ない。

素直に見れば、人間の成長ドラマであるのだが。

余談雑談 2015年1月17日
正月明けの連休も終わり、こちらは新たな歯医者での治療が始まった。 また、親切な読者の方から連絡があり、ご家族がお世話になった歯科治療が上手い病院を紹介してくださった。場所も自分が住む同区内である。嬉しい限りであり、この場を借りてお礼申し上げ