余談雑談 2015年2月7日

先週末のこと。行きつけの店のある新橋まで飲みに出向いた。平日はサラリーマンの聖地であり、どの店も電車も混雑しているので、余程のことがない限り行きはしないので、基本ハシゴ酒になる。

先ず、一軒目。小さな「もつ焼き屋」へ。何よりも新鮮な豚の内臓を廉価で提供してくれる有難い店。

開店直後だったが、独特のオーラを放つ男女二名が、既にカウンターに坐っていた。男性の方はいきなり、自分を見ると睨むような視線を送って来た。タダ者ではないと直感したが、それでたじろくようでは、下町人間のプライドが許さない。一席開けてカウンターに陣取った。

酒を飲み始めたら、若い店長が試作品だと言って『特性漬け込み豚耳』を出してきた。数十年、町屋や三河島といった場末感漂うもつ焼き屋で飲んできた自分は、新橋という完全アウェーな場所ながら、止せば良いのに昔の下町の味付けを云々する悪い癖がある。

嫌な客だと思いつつも、一応、新作に関しては、質問されるので、自分なりの意見を述べてみた。

すると、入店時に睨んできた男性も、既に味見したらしく、自分も同意見だと話しかけてきた。それから、会話が始まったのだが、ふと見ると左手の薬指と小指がない。

やっぱり、タダ者ではなかった。何故か、向こうが年長なのにこちらを「先輩」と呼び、自分が有名観光地の人間だと知ると、五月の祭の話になり、ガンで余命宣告を受けながら数年も生き延びているが、今年こそ最後かもしれないから「宮出し」で『ハナ棒』を担ぎたいと言った。

でな、若い衆を大勢付けましょうかとか言うから、いらねェ、テメーの力で行くからって答えたんだよ、と。

場所柄、子供の頃から、その手の人間は大勢いて見慣れているし、こちらが意気がらなければ問題ないと思っている。それでも、やはり長居は無用だ。頑張ってくださいと告げ、店を辞した。

その足で二軒目に行き、30分ほどで帰ろうと思ったその時である。

何と財布がないのである。落としたのだ。店に事情を話し、慌てて一軒目に戻った。既に隣席の男女は居なかったが、店内には落ちてなったとの返答。となれば、二軒目までの路上だ。

頭の中が真っ白になったが、念のために、駅前交番に行った。届け出用紙をもらい記入すると、別な警察官が、自分の財布を裏から持ってきた。

元々、数千円しか入っていないが無事。カード類もそのままだ。奇特な方もいるものだと感心し、謝礼はいらないが、お礼の電話が欲しいとの伝言であり、その場で連絡を入れた。

電話口の向こうから雑踏の声が聞こえ、どうやらキャバクラか居酒屋のキャッチらしい男性だった。

二軒目に戻り、支払いを済ませたが、完全に酔いが醒めていた。

事なきを得たものの、これにて今年の運を使い果たしかもしれぬと疑念が湧き、更には、今年から新橋は鬼門に入ったのかとも思った。

一体、何をしに行ったのかと不思議さを感じた晩。

メルマガ詳細