スタッフ
監督:マイケル・リッチー
製作:ケネス・L・エヴァンス
脚本:ロバート・ディロン
撮影:ジーン・ポリート
音楽:ラロ・シフリン
キャスト
デヴリン / リー・マーヴィン
メリー・アン / ジーン・ハックマン
ウィーニー / グレゴリー・ウォルコット
クララベル / エンジェル・トンプキンス
ボビー / シシー・スペイセク
ヴァイオレット / ジャニット・ボールドウィン
ショーネシー / ハワード・ブラット
オブライエン / レス・ナノム
ジャイク / エディ・イーガン
日本公開: 1972年
製作国: アメリカ作品
配給: 東宝東和
あらすじとコメント
今回もリー・マーヴィン主演作で繋げた。いかにも彼らしい『裏社会のヴェテラン殺し屋』を描いた、B級感溢れるクライム・アクション。
アメリカ、シカゴカンザスで食肉工場を運営するメリー・アン(ジーン・ハックマン)は、シカゴのボスから借り入れした50万ドルを返済しないばかりか、送り込まれた人間たちを次々に殺害するという暴挙にでた。
業を煮やしたボスは、ヴェテランのデヴリン(リー・マーヴィン)を呼んだ。メリー・アンとは顔見知りで、かつて同じ女を取り合ったこともある彼は5万ドルの報酬で引き受ける。ボスは、念のために手下を三名付けると提案し、承諾するデヴリン。
彼らは、車に乗り込むとカンザスに向かった・・・
非道なギャングたちの戦いを描くクライム作品。
裏社会で人を殺して生き抜いてきた男。有無を言わせぬ経験値が漂う。以前は、カンザスにもいたようだ。
そんな彼をサポートするべく同行する若いヤクザは、優しそうな青年。出発前に母親ら家族に会ってくれと頼むようなタイプだ。まるで、社会人の新人が、上司に期待をかけられ、初めて先輩と出張に行くので、家族紹介するのは当然という風情である。
苦虫を噛み潰した顔になる主人公。なぜなら、死ぬ可能性が高いからである。彼は車中でも、初めての出張にワクワクしている子供のように振る舞う。
運転手を務めるのは、主人公と長年付き合いがある無口な男。この男は頼りになりそうだ。
それに、そこそこ経験値がありそうな中堅の計三人。
彼らはあまり会話を交わさぬままカンザスへ入っていく。
待ち受けるのは食肉工場を表向きにしながら、若い女たちを薬漬けにし、家畜のように全裸で柵に入れ、客に買わせるような男だ。
そんな男には、多少、頭が弱い弟がいる。家族は、そのたった二人で、当然、出来の悪い弟を溺愛している。
この兄弟の設定は、黒澤明の「用心棒」(1961)における、仲代達矢と加東大介に重なる。
本作では、この弟が印象的だ。冒頭、ハックマンが経営する食肉工場のシーンで幕を上げるのだが、牛が一頭ずつ狭い通路で水浴びをさせられ、ハンマーで頭を叩かれて昇天されられ、それから大きく『食肉』として加工されて、最終的に腸詰ソーセージになっていく過程が丁寧に描かれる。
どうにも、嫌な予感がする幕開けだ。我々が平素、当たり前に食べている肉が、このような過程を経て口に入っているという現実を目の当たりにさせられると、胃のあたりが痛くなった。
そして、かの弟が、腸詰の最終段階の場所にやって来て、別な挽肉を入れ「スペシャルだ」とヘラヘラ笑う。
出来上がったソーセージは、その場で簡便にラッピングされ、シカゴのボス宛に発送される。
意味はお解りだろう。
以後のストーリィ展開としては、妙味はないが、まるで、往年の東映のメインではない、添え物的ギャング映画のティスト。
知力でなく、経験値と真正面から殺し合うだけしか出来ない人種たち。
そんな中、薬漬けにされた少女を、慈悲深く扱うマーヴィンの渋さや、背の高い小麦畑やヒマワリ畑での銃撃シーンの描き方は、結末は解っているとはいえ、印象的である。
ラロ・シフリンによる音楽も象徴的で、シカゴでは「シカゴ・スタイル」と呼ばれる軽快なジャズ、夜の場面では、クールなモダン・ジャズ。そしてカンザスに入るとカントリー音楽。
内容よりも、白いスーツ姿で押し通すマーヴィンの渋さに頼り切った、いかにもB級感溢れる作品。
強く印象には残らないし、ハッキリ言って、どうでもいい印象。
だが、嫌いなティストではない。