スタッフ
監督:ジョシュア・ローガン
制作:バディ・アドラー
脚本:ポール・オズボーン
撮影:レオン・シャムロイ
音楽:アルフレッド・ニューマン
キャスト
デ・ベック / ロッサノ・ブラッツィ
ネリ─ / ミッツィ・ゲイナー
ケーブル / ジョン・カー
ビリス / レイ・ウォルストン
リア / フランス・ニュイエン
ブラディ・マリー / ジャニタ・ホール
ブラケット / ラス・モーガン
教授 / ジャック・ムラニー
ハービソン / フロイド・シモンズ
日本公開: 1959年
製作国: アメリカ 20世紀フォックス作品
配給: 20世紀フォックス
あらすじとコメント
今回も、米軍兵士らが駐留する南太平洋の島で繰り広げられるドラマ。とはいっても、重苦しく鬱陶しい人間ドラマや、戦闘シーンなどよりも、風光明媚さを謳うミュージカル大作にしてみた。
パプア・ニューギニア諸島周囲の島々は優勢な日本軍に抑えられ、劣勢なアメリカ軍が駐留する、とある島。そこに海軍所属のケーブル中尉(ジョン・カー)がやってきた。
目的は、彼が発案した秘密作戦のためである。しかし、島は戦時下でありながら、暖かな気候と島民の性格などで、どこかのんびりとしていた。兵士たちは、いかに楽しく過ごそうかとビジネスを考えたりしている。看護師のネリー(ミッツィ・ゲイナー)たちも、仕事よりも慰安会で演じる演目に熱心なほどだ。
そんな彼女らを尻目に、ケーブル中尉は、司令官に自らの来島目的を打ち明けた。劣勢な戦況は、近隣の島々が日本軍の手にあるゆえ、補給船団が、ことごとく撃沈される所為であり、自分が海峡を見渡せる敵の島に密かに上陸し、状況を逐次、無線連絡で送りたいのだと。しかし、その島の情報がまったくない。そこで、ここで農園を経営するフランス人のデ・ベック(ロッサノ・ブラッツィ)が、以前、その島にいたという情報を得て、協力を仰ぎにきたのだ。
しかし、そのデ・ベックという男は・・・
何とも変わった意匠で繰り広げられるミュージカル大作。
潜入作戦を立案したアメリカ軍士官。彼は真面目だ。当然、島に駐留する士官らは彼同様。
しかし、それ以外はかなりいい加減な軍人たち。まるで、戦時下とは思えないのんびりさ。それをミュージカルで綴っていくから、何とも珍妙な印象を受ける。
元々はブロードウェイ・ミュージカルであり、楽曲は「王様と私」(1956)、「サウンドオブ・ミュージック」(1964)など、大ヒット作を輩出したリチャード・ロジャース&オスカー・ハーマスタイン二世の名コンビ。
この手のミュージカルは、大体3時間程度の上演がほとんど。なので、本作も3時間弱という長尺作品。しかも、本作は2ヶ月に渡りハワイのカウアイ島でロケが行われた。
確かに、作られたセットではなく、本物の壮大なる大自然を背景に登場人物たちが歌い踊るのはとても魅力的である。このコンビの映画化作品としては、ロバート・ワイズ監督による「サウンド・オブ・ミュージック」でも、同じ手法が用いられている。
しかし、個人的には、どうにも、しっくりこないのだ。戦争を茶化したコメディもあるし、戦闘場面がでてこない作品もある。そういう観点で考えると、確かに戦時下とはいえ、そこで何とか明るく生きようとしたり、夢を与える非現実的なミュージカルだってアリだろう。
本作も然り。『バリ・ハイ』や『ハッピー・トーク』といった有名な楽曲は楽しいが、過去を持つ一般人であるフランス人農園主の性格設定や、ノー天気な印象を与える米軍看護師や下士官という、なんとも、戦争を意識していない人間ドラマが、自分の価値観と乖離していると感じた。
同コンビによる「サウンド・オブ・ミュージック」の設定も同じく第二次大戦下でドイツ軍が絡む話だが、本作の方が、戦時下という状況は取って付けた印象でしかない。
それよりも、南方民族の不思議さと風光明媚さを強調させるための戦時下設定という印象である。
ストーリィとしては、フランス人農園主と看護師の恋と、海軍中尉と現地の娘の恋模様、強烈で独特の雰囲気を持つ現地人中年女性や、コメディ・リリーフを一手に担う下士官の話が展開するのだが、折角、風光明媚な大自然シーンに紗をかけた映像処理など、どうして、そんな演出をするのかと、どうにも珍妙な印象が勝る。
そんな演出をするのなら、大自然を背景にしたロケでなく、ブルー・バックによるセットでの撮影で充分だろう。
終盤になって、やっと戦争中というシークエンスがでてくるが、そこも、ミュージカル的内容ではないので、消化不良な描き方。
これぞ、当時のブロードウェイ・ミュージカルであると感心させられるが、長さを感じて、どうにも馴染めない大作。