桜の開花宣言が出た東京。初めての週末ということもあり、自分が住むビルの眼下の公園は、気の早い人たちでごった返している。殆ど咲いていないのにである。
確かに、寒くつらい冬がやっと終わり、待ち遠しかった春の到来であるから当然か。
近くの百貨店の入口には大きな看板で、カレンダーが掲示され、日付の上に「五分咲き」から、「満開」と印が付いている。これは今までになかったことだ。きっと、近くに新たに増設された、別な複合施設を意識したものかもしれぬ。
その新たに増設された施設も、連日、多くの人でごった返している。一階は、すべて飲食店で、ランチが1500円のナポリ式石窯ピッツァ屋やら、有名老舗天婦羅屋の四代目が出した最低2500円の天丼屋とか、こちらが迂闊には近づけない店舗が並ぶ。
また、そこには洋服の量販店も参入し、そろそろ礼服でも買い直そうかと思い、行ってみた。
驚いたのは流行とやらである。全部が細身なのである。確かに街中でも、それってキツくないのと思うような体にぴったりとフィットしたスーツを着ている人を多く見かける。
個人的には、顔の大きい日本人には似合わないと思っているが、使用する生地も少なくて済むし、景気を反映しているのか、更には、ある意味、エコを意識しての流行だろうか。
ためしに袖を通してみたが、案の定自分には、まるで中学の制服状態。要は、体の成長が早過ぎて、そう簡単に買い直しが出来ない時代を思い出させてくれただけ。一寸、動いたら、糸が切れそうな印象。折角、痩せたのに、またぞろ太ったかと誤解されそうだ。
バブルの頃は、肩パッドが思い切り入っているが、ゆったり目のデザインで、ズボンもダボダボ系、しかもダブルのスーツが流行っていたようにも思う。間違いなく、一着分の生地は余計に必要だったよな。当時、10キロ以上も太っていた自分は、『七難隠す』と思い込んで着用していた。
昨今、『プチ・バブル到来か』とか揶揄されているし、流行は繰り返すとも言われているので、そろそろゆったり目のスーツが再登板してくるのだろうか。
個人的には、そちらのスタイルが好きではあるのだが、バブルで良い思いをした経験もない。
試着したスーツをそっと棚に戻して帰宅しただけの夕方。