スタッフ
監督:アニリ・ヴェルヌイユ
制作:アンリ・ヴェルヌイユ
脚本:A・ヴェルヌイユ、ジル・ペロー
撮影:クロード・ルノワール
音楽:エンニオ・モリコーネ
キャスト
ウラソフ / ユル・ブリンナー
ディヴィス長官 / ヘンリー・フォンダ
ボイル / ダーク・ボガード
ベルトン / フィリプ・ノワレ
タヴェル / ミッシュエル・ブーケ
アナベル / ヴィルナ・リージ
スザンヌ / マリー・デュボア
ケイト / エルガ・アンデルセン
デブコー / ファーリー・グレンジャー
日本公開: 1974年
製作国: 仏、伊、西独 フィルム・ラ・ボエテ作品
配給: 日本ヘラルド
あらすじとコメント
ダーク・ボガードが出演しているスパイもので繋げた。一般人らが巻き込まれるのではなく、米ソの冷戦下で繰り広げられる西側と東側のそれぞれの「プロ」たちの丁々発止を渋いオールスター・キャストで描いたフランス映画。
フランス、パリモスクワ行旅客機に搭乗予定のソ連の外交官ウラソフ(ユル・ブリンナー)が、突如、空港警察に逃げ込み、亡命を希望した。慌てたのは、彼を尾行監視していたKGBたちだ。
ウラノフがKGBの高官であると認知していたフランス政府は、すぐに防諜局長官ベルトン(フィリップ・ノワレ)に担当するよう命じた。しかし、ベルトンは、本当に亡命なのか、それとも何か裏があるのではないのかと疑うが、ウラノフは、亡命先はアメリカであり、直ちにアメリカ大使館に連れて行ってくれと告げる。
当然、面白くない彼は、強硬な揺さ振りをかけようとするが、政府からストップがかかり、急遽、アメリカ側に引き渡されることになってしまう。
アメリカに着いたウラノフを迎えたのはCIAのディヴィス長官(ヘンリー・フォンダ)とイギリス諜報部のボイル(ダーク・ボガード)だった。
彼らもウラノフの腹を探ろうとするが・・・
冷戦下の非情なスパイたちの生態を描くサスペンス作。
突如、亡命するKGB高官。単に亡命なのか。それとも、深謀遠慮な策謀を秘めているのか。
ベースは『NATO』(北大西洋条約機構)という西側の軍事連携である。しかも、当時、フランスはその条約から脱退していた。
そこが本作のミソというか、かなりの意味を持つ。
主人公は、何故、パリの空港で亡命を希望しておきながら、すぐにアメリカへの亡命を指定するのか。こちらはそこに何らかの意図があると疑う。
当然、要注意人物ということで、CIA下での半年間の観察措置となり、嘘発見器にかけられ、完全監視下の生活を余儀なくされる。
愛国心から亡命し、現体制では自分の理想国家が望めないと言う亡命者。
どうにもキナ臭い状況が続いていく。すると、亡命者はNATO内に東側に寝返っている高官級のスパイが何名もいて、重要な情報が筒抜けだと言いだす。
そして自分が西側の味方であることを証明するためにと、その内通者の名を次々と列挙しはじめるのだ。
秘密裏に西側が調査、対応しようとすると、名前の挙がった人間らが、次々と変死していくというサスペンスが連続し、亡命者の真の意図が計り知れぬまま、西側諸国をあちらこちらに飛んでのイタチごっこが繰り返されていく展開。
何を考えているのか解らないブリンナーと丁々発止の演技合戦を繰り広げるCIA長官役のフォンダが、実に上手い。
イギリス情報部のダーク・ボガードや、フランス防諜局長官役のフィリップ・ノワレも、お国柄を代表する演技で、国際色豊かな印象。
まあ、製作国のメインがフランスゆえに、どうしても中盤以降、ノワレばかりに焦点が当たるのは仕方ないことだが、一応のバランス配分を意識したテレンス・ヤングの手堅い演出で安心して観ていける。
当然、突っ込みどころもあるが、シニカルなラストに、スパイという人種の誇りと虚しさが強調される作品である。