ギャング – LE DEUXIEME SOUFFLE(1966年)

メルマガ会員限定

画像を表示するにはメルマガでお知らせしたパスワードを入力してください。

スタッフ
監督:ジャン・ピエール・メルヴィル
制作:シャルル・ランブロンゾ
脚本:J・P・メルヴィル、ジョゼ・ジョヴァンニ
撮影:マルセル・コンブ
音楽:ベルナール・ジェラール

キャスト
マンダ / リノ・ヴァンチュラ
ブロ警視 / ポール・ムーリッス
ポール・リッチ / レイモン・ペルグラン
マヌーシュ / クリスティーヌ・ファブレガ
ジョー・リッチ / マルセル・ボズッフィ
アルバン / ミッシェル・コンスタンタン
オルロフ / ピエール・ジンメル
フォルディアノ / ポール・フランクール
ジャック / レーモン・ロワイエ

日本公開: 1967年
製作国: フランス モンテーニュ・プロ作品
配給: 日本ヘラルド


あらすじとコメント

「情報(ねた)は俺が貰った」(1959)で主演デビューを果たした、大のご贔屓俳優リノ・ヴァンチュラ。今回は、コメディ・アクションではなく、彼の真骨頂と呼べるノワールもの。監督は、これまた大好きなジャン・ピーエル・メルヴィル。これぞ、フランス製フィルム・ノワールの金字塔の一本と呼べる、クールな傑作。

フランス、中央刑務所11月20日の早朝、三人の囚人が脱獄した。しかし、ひとりは壁から転落し、死亡。残る二人の内のひとりは、以前見事な手際で強盗事件を起こしたマンダ(リノ・ヴァンチュラ)である。しかし、金を使い果たし、自暴自棄になって大暴れした挙句の逮捕で、懲役8年目の最中だった46歳の男。二人はすぐに別れ、彼は昔馴染みのマヌーシュ(クリスティーヌ・ファブレガ)のいるパリへ向かった。

一方、パリではマヌーシュの経営するレストランに、マルセイユから麻薬の縄張り争いで、パリの男に落とし前をつけるため「交渉人ジャック」と呼ばれる男が来ていた。

そんな彼は、ケリを付ける前に彼女を籠絡しようとしていたのだ。そこに、「交渉人ジャック」の訪パリを知った相手側が、突然、レストランになだれ込んできて、銃を乱射した。脱獄囚マンダとマヌーシュの旧友であり、レストランの用心棒のアルバン(ミッシェル・コンスタンティン)が、応戦したが、ジャックは死亡してしまう。

そして、パリで一番のキレ者であるブロ警視(ポール・ムーリス)が、店にやって来て・・・

複雑な進行を見せる、これぞノワールと呼べる傑作。

脱獄した中年男。とはいっても、奪った大金を使い果たした挙句の極貧であり、金など残ってない。だからか、どこか自棄気味の暴れ者。

危険を承知でパリに戻り、昔馴染みのところに逃げ込もうとするのは当然だろう。

そんな主人公とは全く関係なく、パリとマルセイユのギャング同士のいざこざで射殺された「交渉人」と呼ばれる男が、一ヶ月後の年末に予定されている500キロのプラチナ強奪計画の一員だったことから、その計画自体にも影響がでてくるという展開。

そこに主人公がどのように絡んでくるのか。登場人物も、強奪計画の主犯格の兄弟や、実行犯たち、警察関係者など多岐にわたり、それぞれが主人公と旧知の仲だったり、恨みを買っていたりするから、ややこしい。

裏社会の人間たちにも、誰が味方で誰が敵か計り兼ねる人間もいるし、警察側だって、腹に一物ある人間もいて複雑。

要は、善人が登場しない、これぞノワール映画という設定なのだ。

出演者も、脇役に至るまで、暗さを引き摺ったり、会話など交わさなくても、あうんの呼吸で動く仲間と、誰を取っても役にマッチして見事。

中でも、クールで冷徹で腹がまったく読めない警視役のポール・ムーリッス、主人公の旧知の中で、あうんで動くミッシェル・コンスタンタンは、抜群の存在感である。

しかし、何といっても、主人公を演じたリノ・ヴァンチュラの圧倒的な存在感が際立つ。

彼の代表作と呼んでも過言ではない。警視とは別な意味でクールで、長年裏社会で生きてきた陰のある部分を滲ませてシビレる。

特に、最後のヤマ場で、自分にケジメをつけて乗り込んでいく場面など、東映任侠映画のようで、鳥肌が立つ。

パリの街角や寂びれた田舎など、常に寒さを感じさせる中でうごめく人間たちの姿を浮かび上がらせるメルヴィル監督のシャープな演出が全編を貫いている。

何から何まで、これぞフィルム・ノワールという、ゾクゾクする傑作。

余談雑談 2015年5月23日
とても貴重な体験をさせてもらった。長年、この読者であるハワイ在住の方と飲んだのである。 このメルマガは、7月で11年目に入るが、初期から、ご愛読いただけていたようで、未知の読者さんたちと何か若干でも交流が持てないかと200回目のときに、次回