スタッフ
監督:ケン・ラッセル
制作:ハリー・サルツマン、アンドレ・ド・トス
脚本:ジョン・マクグラス
撮影:ビリー・ウィリアムス
音楽:リチャード・ロドニー・ベネット
キャスト
パーマー / マイケル・ケイン
ニュービギン / カール・マルデン
アーニャ / フランソワーズ・ドルレアック
ストーク大佐 / オスカー・ホモルカ
ミッドウィンター / エド・ベグリー
ロス大佐 / ガイ・ドールマン
エウォード / ウラデク・シーバル
バジル / ミロ・スパーバー
ビルキンショウ / マーク・エルウェス
日本公開: 1968年
製作国: イギリス ハリー・サルツマン・プロ作品
配給: ユナイト
あらすじとコメント
女優フランソワーズ・ドルレアック。カトリーヌ・ドヌーヴの実姉であるが、まったくタイプが違う女優であった。残念ながら、僅か25歳で天逝したが、そんな彼女の遺作を選んでみた。
イギリス、ロンドン英国諜報局MI-5を辞職したパーマー(マイケル・ケイン)は、探偵事務所を開いたが、一向に客足は伸びず、生活にも窮する状況だった。
ある晩、事務所に侵入者が来て、取り押さえようとした彼だが、相手が、かつての上司ロス大佐であったので驚いた。大佐は、パーマーに職場復帰するように依頼したが、今更、薄給で命がけの任務など真っ平御免だと拒否する。
そんな彼の元に現金とキーが入った封筒が届いた。指定した時間と場所に行き、とあるものを指定先まで運べば大金が入手できると。訝しがるパーマーだが、仕事とあれば、と向かった。赤い魔法瓶をヘルシンキにいるとある博士に渡してほしいという依頼であった。
彼がヘルシンキに着き、博士にアポイントを取ると待ち合わせ場所にやってきたのは、美人のアーニャ(フランソワーズ・ドルレアック)で・・・
冷戦下の諜報活動で生き抜いてきた男が、再び元の世界に舞い戻る、飄々としたサスペンス作品。
リタイアした諜報部員。だが、優秀なスパイなため、再度雇用したいと考える上層部。
愛国心から思い悩むが、別件で訪れたヘルシンキで殺人事件に巻き込まれ、助けてもらうことを条件に、渋々、復帰する。
ある意味、二重スパイ的活動になるのだが、そこは主人公の設定がジェームス・ボンドのようなタフではないところがミソ。それでもクールで知的、多少のことには動じないスマートなふてぶてしさをも持っている。
もっとも、原作はレン・ディトンによるシリーズで、映画化作品も全作ケイン主演で、「国際諜報局」(1964)、「パーマーの危機脱出」(1966)に続く三作目。
なので上官なり、ソ連のKGB高官なり、前作と同じ人物が登場してくるのだが、そのあたりは、見ていなくても想像が付くので混乱はしない作劇になっている。
今回、主人公の顔見知りだが、連作映画として初登場してくるのが元CIAエージェント。
どいうやらKGBでもCIAでもなく、10億ドルもするコンピューターが指令してくる組織に入り込んでいる模様で、若い美女に入れあげてもいるという展開。
そこにイギリス情報局の指令も絡んでくるのだが、派手なアクションあり、お色気ありと当時のスパイ・アクションの作風を踏襲している。
しかし、特筆すべきは、監督がケン・ラッセルということ。一風変わった映画ばかりで、好き嫌いが別れる作家であるが、本作でも定石を踏襲しつつ、時折、凝ったカット割りや繋ぎ方をしていて、独自性を発揮していると感じる。
シリーズ一作目の監督は、後にアメリカに渡り、マーロン・ブランド主演の異色西部劇「シェラマドレの決闘」(1966)や、ロバート・レッドフォードのアメリカン・ニュー・シネマ「お前と俺」(1970)など、渋い作品群を放つシドニー・J・フューリー。
二作目が「007」シリーズを四作監督しているガイ・ハミルトン。
主役は通してケインが演じているが、全作どれも微妙にトーンが違うので面白い。
後半からがらりとトーンが変わり、アメリカ人を小馬鹿にして、アメリカよりソ連の方が善人的描かれ方をするというコメディ色が強くなるので、個人的にはそこが一番ツボであった。