波止場 – ON THE WATERFRONT(1954年)

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スタッフ
監督:エリア・カザン
制作:サム・スピ-ゲル
脚本:バッド・シュールバーグ
撮影:ボリス・カウフマン
音楽:レナード・バーンスタイン

キャスト
マロイ / マーロン・ブランド
バリー神父 / カール・マルデン
スケリー / リー・J・コッブ
チャーリー / ロッド・スタイガー
エディ / エヴァ・マリー・セイント
グローヴァ- / リーフ・エリクソン
デューガン / パット・ヘニング
パパ・ドイル / ジョン・F・ハミルトン
ジレット / マーティン・バルサム

日本公開: 1954年
製作国: アメリカ エリア・カザン・プロ作品
配給: コロンビア


あらすじとコメント

前回の「ポセイドン・アドベンチャー 2」(1979)で、そこそこの存在感をだしたカール・マルデンは脇役が似合う俳優。今回は熱血牧師を演じた作品を選んだ。今見ると、いかにも『赤狩り』時に物議を醸したエリア・カザンらしい社会派ドラマ。

アメリカ、ニューヨーク元ボクサーで沖仲士のマロイ(マーロン・ブランド)は、波止場を取り仕切り、沖仲士からピンハネして君臨している組合委員長スケリー(リー・J・コップ)とマロイの兄チャーリィ(ロッド・スタイガー)の命令で、「犯罪調査委員会」に出席を予定していた旧友を呼びだした。証言を拒否するように説得するからと。

しかし、直後、旧友はビルから突き落とされて死亡してしまう。驚くマロイだが、スケリーの子分たちは当然という風情だった。駆けつけて来たのは労働者を励ます牧師のバリー(カール・マルデン)と旧友の妹エディ(エヴァ・マリー・セイント)。

突然の兄の死に動揺を隠せないエディ。そんな彼女を見たマロイは・・・

搾取される労働者と殺人をも平気で行う搾取側の行く末を描く重厚な社会派ドラマ。

ボクサー崩れで自己中心的な主人公。大学出でボスの計算係の兄。直情型で威圧的なボス。何とか犯罪を立証させたい警察や、熱血牧師が労働者たちに立ち上がるように促すが殺害される恐怖から躊躇する労働者たち。

とても解りやすい構図での進行。他にも、証言予定の息子を殺された父娘や、正義感から新たに立ち上がろうとする労働者なども登場するが、これでもかと、搾取側の暴力によって、徹底的に排除され、犠牲者も続出していく。

そんな中で、主人公は『長いものには巻かれろ』的性格で、観る側にジレンマを増幅させつつ、彼自身はやがて四面楚歌となっていく。

しかし、殺害された証言予定者の妹に恋したことから、熱血牧師の御託も心に響くようになり、自分の価値観に変化が生じてくる。

『希望の兆し』である。主人公は、やがて改心するであろうと予感させるために、劇中、何度も登場してくるのが「ハトの飼育」。周囲の人間たちには、それが奇異に見えているからこそ、彼の立ち位置が浮かぶのである。

これこそ、「平和」と「飛翔」という『希望』の象徴であろう。

要は、事なかれ主義なのは「無知」ゆえであり、性根は善良であるが、それを表面化する術を知らなかっただけという展開なのである。

一方で、『組合』という、本来、労働者側の組織が、悪の温床となり、利権主義に憑りつかれた権力と経済至上主義者に変貌している組合長。

組合員たちは、単純な肉体労働である『沖仲士』の他に仕事ができないタイプが多いからなのか、そこにも主人公同様に根ざしているのは「無知」。

ゆえに彼らは服従するしかないと思っている。

やがて誰かが立ち上がり、それに追従していく者が増加し、弱者の権利向上というか、人間としての本来持つべきである尊厳を回復できるぞという、完全な社会主義礼賛映画にして、心身ともに貧しき者よ立ち上がれと声高に謳い上げるドラマ。

主役のブランドのメソッド演技から、直情型のリー・J・コッブやマルデンの演技など、確かに、誰が見ても解りやすいメリハリで陰影を強調し、冬の寒さを際立たせるカメラ・ワークなど、映画としては、とてもまとまっている。

ただし、現状、社会主義はどうなったかという時代性を感じざるを得ないのも事実。

余談雑談 2015年7月11日
久し振りに昨日から晴天の東京。これで少し、傘を休ませられるか。 個人的には、どうにもビニール傘が苦手なので、それなりの価格の傘を購入し、長年愛用することにしている。 かなり昔だが、何故か妙に傘にこだわり、何本も購入し、使い分けるという道楽が