梅雨明けした東京。案の定、以降、厳しい暑さが続いている。今年は冷夏傾向だろうとも言っていたが、まったくもって、現在のところハズレである。
そうはいっても、極端に暑かったり、逆に梅雨寒で日照時間が短く、着るものに困る日もあり、トータルして割ると『平年並み』になったりするから始末に悪い。
特に、歳を重ねると直ちに体が適応できないのが困るのである。適応能力の劣化を痛切に感じるし、ボーっとする時間が長くなったのは精神的緊張感の欠如ゆえだろうか。
とはいえ、以前にも増して慣れて来たものもある。『辛さ』の味覚である。
生活習慣病の発覚後、甘いものを極端に食べなくなったが、逆に、辛いものはエスカレートして来たのだ。
たまに顔を出すラーメン屋では、自分専用に大島の「島唐辛子」と、「一味」が常備されている。どうやら自分以外は、辛すぎて食べないらしいが、妙に減る量が早くなった。
しかも注文は決まって味噌ラーメン。年間を通してである。何度か別なメニューで使用したが、辛さが際立ち、流石に閉口した。
考えてみれば、醤油や塩の時は「胡椒」、味噌ラーメンだけは「七味」を振りかける。その延長だろうか。
その味覚麻痺に輪をかける出来事が起きた。実家のタバコ屋の近くに、韓国料理屋が新規開店した。小さな店だが小洒落た店構えで、ランチの営業もしている。
メニューに「ユッケジャン」という真っ赤なスープ雑炊があった。二年ほど前、自室近くの韓国料理屋が撤退してから、まったく焼肉なり、韓国料理を食さなくなっていたので、早速、入って注文してみた。
ところがどうだ。色こそ真っ赤であるが、まったく辛くない。店の方は四名いて、全員が韓国系。開店したばかりで、一々、客の顔色を伺う。味ハ、ドウデスカと尋くので、正直な感想を告げた。
何言か会話をし、一味と緑色の唐辛子をみじん切りにして貰った。それらを大量に入れて、やっと味がした。
スタッフ全員が、かなり驚いて見つめる。「大丈夫デスカ」と不思議そうに言い、韓国人デモ、コンナ辛イノハ食ベナイ、だと。調理人の中年女性は、一切、日本語を話さないらしく、店長が、彼女だったら救急車を呼ぶと。
おやおや、韓国料理は辛いと思っていたが、いつの間にやら、これほど味覚が麻痺していたとは。次からは、もっと辛くしますと。
まあ、天気予報じゃないが、味覚自体がハズレているということか。それでも、人生総じて、バランスが取れるのだろうか。
まあ、その店の店長が、ほぼ毎日、高いタバコを買い求めに来るようになっただけでも、良しとするか。