スタッフ
監督:リチャード・ブルックス
制作:パンドロ・S・バーグマン
脚本:リチャード・ブルックス
撮影:ミルトン・クラスナー
音楽:ハロルド・ジェルマン
キャスト
ウェイン / ポール・ニューマン
アレキサンドラ / ジュラルディン・ペイジ
ヘヴンリー / シャーリー・ナイト
フィンレイ / エド・ベグリー
トーマス / リップ・トーン
ノニー / ミルドレッド・ダンノック
ルーシー / マドレーン・シャーウッド
スカダー / フィリップ・アボット
ハッチャー / ダブ・テイラー
日本公開: 1962年
製作国: アメリカ ロックスベリー・プロ作品
配給: MGM
あらすじとコメント
ポール・ニューマン繋がり。いかにも彼っぽい演技で攻めてくる閉塞感が漲る人間ドラマをチョイスしてみた。
アメリカ、南部小さな海沿いの町セント・クラウド。一台のオープン・カーがホテルに乗りつけてきた。運転していたのは、若いウェイン(ポール・ニューマン)で、後部座席には、泥酔した中年女のアレキサンドラ(ジュラルディン・ペイジ)がいた。
ウェインはこの町の出身で、連れは、かつて『セクシー・シンボル』と呼ばれた大女優だと誇らしげに告げるとスイート・ルームにチェック・インした。彼自身、ハリウッドでの成功を夢見て、でて行った男だったが、彼の帰郷には、ある目的があった。
それは、元恋人ヘヴンリー(シャーリー・ナイト)に会うことだったが、地元の人間たちは、彼女には会わずに、すぐに街をでた方が良いと勧めて・・・
エゴを剥きだしにする人間たちを描く重厚なるドラマ。
アメリカ南部の閉鎖的な場所。海沿いだが、息苦しさを感じさせる場所でもある。それは、警察から地元新聞社まで、町のすべてを牛耳るボスがいるから。
主人公が会いに来たのが、その愛娘。町中の人間が、すぐに立ち去れと勧める。一体、過去に何があったのか。
しかし、主人公は、何で皆が同じことを言うのか合点がいかないのだ。そして主人公が連れて来たのは、落目の大女優。彼女はアル中で麻薬中毒であり、傲慢さを絵に書いたようなタイプ。
どうしてそんな女と一緒にいるのか。そして、二人はどんな関係なのか。
ミステリアスな導入部から、一挙にそれぞれの人間たちのバック・ボーンが描かれていく。
本作での核は「アメリカン・ドリーム」。裸一貫から立身出世して君臨する夢を持つ。実際の具現者は田舎町のボスと大女優の二人である。
二人とも、如何に自分が血の滲む努力をして、這い上がってきたかを自慢する。そして主人公も、その実現を目論んでいるのだ。
当然、三者三様の言い分があるが、総ては自分のエゴに帰結する。
そんな彼らを取巻いているのは、主人公のかつての恋人と彼の叔母、実力者のバカ息子、保安官や、実力者の愛人など。そういった人間たちも、大小の差こそあれ、それぞれのエゴがある。しかし、全員、自己については正論であり、正義なのだ。
原作は「熱いトタン屋根の上の猫」、「欲望という名の電車」等、人間の奥底に潜む脆弱さや本能を描破した作品を数多く輩出した名戯曲家テネシー・ウィリアムズ。
ゆえに、閉鎖的な南部という場所での、いびつな価値観や独自の論理といった『井の中の蛙』的な世界での優劣である。
主人公でさえ、その些少な世界から飛びだしたつもりでも、シッカリとその呪縛に罹っている。
やはり閉塞的な南部の地域で起きる出来事を鋭く描いた「逃亡地帯」(1966)と同様な人間たちが、炙りだされ、もがいていく。
「逃亡地帯」の主演はマーロン・ブランド。本作の主演は、デビュー当時、『小さなマーロン・ブランド』と呼ばれ、彼と同じアクターズ・スタジオ出身のポール・ニューマンである。
しかも、テネシー・ウィリアムズ原作の映画化も、両名が主演している作品が多い。
「逃亡地帯」とは原作が違うし、内容も違う。しかし、どうしても『一対』として見比べてしまう作品。