余談雑談 2016年1月16日

実家のタバコ屋前の飲食店が、代替わりし、新規に営業を開始した。仕事関係や友人等から開店祝いの花が贈られ、店前に飾ってある。平素は色気のない通りなので華やかだ。

ところが、ほんの数日でそこから当然のように、花を引き抜いて持って行く人が続出している。

或るバアさんは「枯れそうだから」と笑顔で、通りすがりの人に言った。後ろめたさからだろうか。それとも「もったいない」精神で当然か。

でも、それって窃盗ではないかと思う自分は心に大らかさが足りないのだろう。聞くところによると、その手の花は、幸運の『おすそ分け』として持ち帰っても良いと言う人もいる。

その光景を見て、昔の夜の銀座を思い出した。売上げトップ級ホステスの誕生日や、ママの入店祝いで盛大な花が贈られて、それこそが、その女性の実力とも言われた。

その花が12時の閉店時には、ほぼ全部引っこ抜かれていた。原因は、今や完全に姿を消した商売の「花売りおばさん」たちだ。

おばさんたちは、それを小分けにして翌晩から「花はいりませんか」と通行人に声を掛ける。とはいっても、本当に終戦直後の時代じゃあるまいし、移動式花屋ではない。銀座という場所は、あれだけのバーやクラブの店舗が同じような雑居ビルに入り、酔客たちが店の名前だけで探すのは困難でもあった。

そのときに花を1000円で買い、彼女らに道案内を頼むのだ。ということは銀座の街角に立つ花売りおばさんたちは、全部の店を知っているということ。

ある意味、凄いじゃないか。新規開店やら、売上げトップクラスのホステスの移籍情報まで知っていた。

久し振りに店を訪れる客が花束を持っていると、ホステスに「店が分かんなかったんでしょ」と冷やかされるのを見たことがある。

まさか、実家前から花を持ち帰る人たちは、もの凄いデータ量を暗記し、的確に地元飲食店の本当に行く価値のある店を花を売りながら紹介してるわけでもなかろう。

今は、金払って案内されるより、スマホ等で素人の書き込みを見て店を探すほうが楽だし、信用できるか。

まあ、確かに、自分だって、金を払ってまで案内は必要ないよな。

まして、その花の出所を知っていればな。

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