余談雑談 2016年1月30日

何とも、お寒い日が続く東京。そんな中、フリーとして出入りする編集部に出向いた。途中、二、三年ほどブランクがあるが、それでも、もう十年になる。

しかし、あくまで足かけ十年であり、日々、通っているわけではない。なので、知っているようで知らないことが多いのが事実。

先立ても、初めて知る業界用語というか、符丁があった。売行きが良く、増刷に関する言葉。「重版出来」。

てっきり「じゅうはん・でき」だと。実は、重版『しゅったい』と発音すると。

長い間知らなかった。確かに、それに近い言葉は聞いていたかもしれぬが、単に発音だけだとイメージが及ばず、『失態』とか聞こえていたかも。まあ、知ったかぶりして、会話しなくて良かったなと思う次第。

出版業界だけでも、独特な言い回しがある。内容が書かれている部分のことを意味する「本文」は「ほんぶん」ではなく『ほんもん』。

他にも、マンガで上下が切れていている場面は、実際、はみ出した部分も描かれている。それが大き目の出力用紙に、印刷されて出稿してくると、実際に雑誌として印刷出力できる枠を赤く囲うことを「トンボをきる」とか。

しかし、こういう業界用語なり符丁はいつの間にか、関係ない人間にまで普及しているのも現実だろう。

関係ない人間に知識として披露するのはこちらも勉強になるので興味深いが、実際、その業界にいる人間に使うのは如何なものかと思う。

特に気になるのが、飲食店で客が支払いを頼むときに発する「おあいそ」という言葉。

本来、あくまで店側の「愛想笑い」から来ているからだとか。醤油を「むらさき」というのも同じ。

ツウぶっていると逆に足元を見られる。事実、昔、通っていた地元の寿司屋では、客が「おあいそ」と言うと、ご主人が「お会計ですね」と言い返していた姿を何度も見かけた。また、客の来店時には「いらっしゃいませ」ではなく、「いらっしゃいまし」と江戸弁を使用していた。

そんなご主人も亡くなり、代替わりしながら営業を続けていて、時折、前を通るが、自分も顔を出せるほどの余裕がなくなっている。

自分の中で、あのご主人を超える寿司はないと思っている。何から何まで完璧だったという印象。なので、現在の自分の状況を考えれば、再度体験不可能な、良き思い出としてあきらめも付くというもの。

しかも、寿司に限らず、焼き肉や小料理屋といった店からも完全離脱状態。その代わり、もつ焼き屋や酒場で満足する。

まあ、進化というか、変化して行くことも受け入れよう。

でも、変わらないこともあるだろう。ところが、周囲の状況や、時代の流れによる価値観の変化など、そっちのけで生きるから、「偏屈」とか「依怙地」って言われるのか。

一応、そういったことも鑑みたりはするが、直すところまでは行かない。それが「出来」が、「失態」と聞こえる要因かもしれぬが。

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