泳ぐひと – THE SWIMMER(1968年)

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スタッフ
監督:フランク・ペリー
製作:フランク・ペリー、ロジャー・ルイス
脚本:エレノア・ペリー
撮影:デヴィッド・L・クエイド、マイケル・ネビア
音楽:マーヴィン・ハムリッシュ

キャスト
メリル / バート・ランカスター
シャーリー / ジャニス・ルール
ベティ / キム・ハンター
ペギー / マージ・チャンピオン
ジュリー / ジャネット・ランドガード
ウェスターハジー / トニー・ビックリー
ハロラン夫人 / ナンシー・カッシュマン
ハンサッカー / ビル・フィオア
グラハム / チャールス・ドレイク

日本公開: 1969年
製作国: アメリカ ホライゾン・ピクチャーズ作品
配給: コロンビア

あらすじとコメント

バート・ランカスターで繋げる。今回は、彼の鍛え上げられた肉体美を強調する、全編を水着一枚で貫き通した異色の人間ドラマ。

アメリカ カリフォルニア晩夏のある日曜の朝、林の中を水泳パンツ一枚で走るメリル(バート・ランカスター)。

やがて、彼は友人であるダン宅に、庭から入り込んだ。邸のプール・サイドには、昨晩のパーティーで二日酔いのダン夫妻が日光浴をしていた。久々のメリルの訪問に驚くダン。君のプールでひと泳ぎさせてくれというメリルに、快く承諾する夫妻。

プールから上がると、メリルの子供時代の友人も夫人と一緒にいた。彼らはパーティーで居残りしたと笑い、これから帰宅するから送っていこうかと誘ってくれた。眼下に広がる丘陵を見て、ふと何かに気付くメリル。

いや、結構だ。考えたら、南西に向かっていけば、何人もの友人宅があるから、全部のプールでひと泳ぎさせてもらいながら、丘の向こうの自宅に帰るとするよ、と。何とも奇特なことだと笑う友人たち。

そして、メリルは、また森の中を走り、次の友人宅へ向かった・・・

アメリカン・ニュー・シネマ初期の、非常にシニカルで残酷な大人のお伽噺。

水泳パンツ一枚で、プール付友人宅を訪れつつ、間は走って行き、自宅まで帰ろうとする中年の主人公。

これだけで、充分に異質な内容だ。ところが、突然、追いだされたり、友人はおらず、娘たちのみという若い女性三人組しかいないプール、かつて主人公の娘のベビー・シッターをしていた年長女性の家ではパーティーを盛大にしていたりと、何とも、奇妙な光景が綴られていく。

当初こそ、久し振りの再会で懐かしがられたり、暖かい歓迎を受けるが、徐々に、おかしな方向に転がっていく。

家庭円満で何不自由ないと思わせつつ、徐々に、主人公の人となりや、現状で置かれている立場が浮かび上がり、悪寒を喚起させてくる進行。

しかも、それが自宅に近づくにつれ、出会う人々全員が、主人公を訝しがるのである。

何とも、こちらも嫌な気分に追い込まれ、主人公が水泳パンツ一枚ということもあり、午後から夕方にかけ、主人公同様に寒さを感じさせてくる。

まさしく「黄昏」であるのだが、当の主人公が、現在の自分に全く気付いてなく、記憶喪失かと思わせる。

ある意味では、アメリカン・ニュー・シネマらしく、「自分探し」なのかもしれないが、中年でエリート意識がある人間だけに、どうにも神経症かと疑いたくなる内容。

しかし、そんな生易しいものではなく、善良さを装いながら、裏の顔を併せ持つアメリカ人の心の闇を浮かび上がらせるのだ。

ただし、作劇が複雑で、主人公以外は、ほとんどの人物が彼の置かれた立場を知りつつ、見て見ぬ振りをしたり、突き放したりと様々であるが、かといって主人公が完全にイカれているとも描かない。

主人公にとってはミステリアスな出来事であり、友人だと思っていた人間の裏切りというか、心変わりが解せないと描いていく。

ストーリィの辻褄を進行通りに見ていくと、狐につままれた感覚に陥る観客もいるかもしれぬ。

初見の時には自分もそう感じたが、再見して、これはある意味での『ファンタジー』なのだと納得した。ただし、かなり病んでいてシニカル。

なまじ泳げるだけに、溺れたりせず、また、力を抜き、水面に浮かぶことも忘れて動き続ける。しかも、体重を感じないので、軽くなった気分のままの状態。

重要なのは、海ではなく「プール」という点だろう。広大な自然ではなく、囲われて制限のある場所であり、ある意味、富の象徴。

そもそも、水泳パンツ一枚で着替えもタオルも待たずに他人宅に入り込んで泳いだり、林を抜けたり、草原を走ったり、一般道を横切ったりしたら、逮捕される。だから、お伽噺なのである。

本当は、『真っ新な人間』として素っ裸で登場させたかったのだろう。

人間の心の真の解放。しかし、水泳パンツ一枚同様、決して、すべてを曝けだせないのが人間という性であると思わせてくる、ある意味、嫌な作品。

余談雑談 2016年2月13日
まったくな、いうことが起きた。またもや義歯が取れたのだ。一昨年末にインプラントの義歯が取れ、散々な目に遭ったが、またもやである。 とはいっても、治療したところとは別な部分。まだまだ若いつもりか、はたまた、ちゃんと考えてないからか、干物の魚の