スタッフ
監督:ピーター・マスターソン
製作:ローレンス・ターマン、デヴィッド・フォスター 他
脚本:ビル・ボーゾン
撮影:フレッド・マーフィ
音楽:フィル・マーシャル
キャスト
フロイド / ジーン・ハックマン
ルイーズ / テリー・ガー
大将 / バージェス・メレディス
ジミー / イライアス・コティース
オドンネル / ケヴィン・クーニー
ヴァージル / デヴィッド・ドティ
ベイッチ / ジル・グラスゴウ
ドロシー / ベッキー・アン・ベイカー
ルイ / マリエッタ・マリッチ
日本公開: 1989年
製作国: アメリカ トランス・ワールド・エンタ作品
配給: 東北新社
あらすじとコメント
妻に先立たれた冴えない中年男の再生ドラマで繋げた。当然、恋愛も絡んでの進行だが、前回取り上げた「奇跡の歌」(1998)の舞台は大都会NYであったが、今回は真逆の片田舎で繰り広げられる、何とも、のんびりさが漂う好編。
アメリカ、テキサス湖に面したカフェ。そこには、一年前、妻に先立たれ、意気消沈している経営者フロイド(ジーン・ハックマン)と、卒中で倒れ、以後、車いす生活を送る口の悪い義父(バージェス・メレディス)の二人が、同居しながら店を構えていた。そして、精神病施設上がりのジミー(イライアス・コティース)が手伝いに来ている。
フロイドは、一日中、妻の映った8ミリフィルムを見ては、落ち込む日々。そんな彼を見かねて、日々、やさしく声をかけるスクールバスの運転手ルイーズ(テリー・ガー)。しかし、フロイドの心に中は妻の思い出で一杯。
当然、店の経営も右肩下がりで、店員の給料はおろか、税金も滞納し、借金だけが膨らんでいる。経営者のやる気がないことを幸いに、常連も、皆ツケで、払おうともしない。こんな現状ではダメだと知りつつ、やはり妻の映像を見てしまうフロイド。
そんなある日、町の不動産屋が店を買い取ると言って来て・・・
主人公を筆頭に、どこか難アリの弱い男たちが繰り広げる、のどかな人間ドラマ。
妻が湖で行方不明になったが、亡骸がでないので、決して死んだことを認めようとしない主人公。だが、それは詭弁で、実に女々しく、妻との思い出に浸っているだけ。
周囲の仲間らも、色々と言ってはくるが、どこ吹く風の態である。
ところが、心と体は別であると思っているから始末に悪い。主人公に好意を寄せるスクールバスの女運転手には平気で手をだす。
何たって、閉塞的な場所。女運転手に好意を寄せる輩もいれば、義父はボケているのかワザとなのか、いつもシニカルだし、施設上がりの青年は防御用だと何故か拳銃を持っていたりする。
他にも、仕事に身の入っていない保安官やら、腹黒いが、どこか抜けてる不動産屋といった、何とも変わった人間ばかりが登場して来て、閉塞的な場所ゆえのいびつな価値観が沈殿していると示してくる。
そんな人物たちが、複雑ではないものの、妙に関わってきて、ややこしい展開となる。
兎にも角にも、主人公のだらしなさが映画を引っ張り、ジーン・ハックマンの拗ねた演技がイイ味をだしているし、どこか安っぽさが先行するヒロインのテリー・ガー、トボケた義父役のバージェス・メレディスも捨て難い。
全体的に、どこか脱力感が蔓延している作品。
それは誰もが頭が切れるタイプではなく、ただ惰性的に日常を生き、それでいて自分を誇示したいというか、構って欲しい症候群の人間たちだからだろう。
どうにも安いバーボンのようなティストで、いきなり悪酔いが襲ってくる印象。
主人公が再生するのかとか、恋の行く末といった結末は想像が付くだろうが、そんな単純なハッピー・エンドではないところに好感が持てた。
良く言えば等身大、本心は自分が重なって落ち込むかもしれない場末的ドラマ作品。