フランキー・ザ・フライ-THE LAST DAYS OF FRANKIE THE FLY(1996年)

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スタッフ
監督:ピーター・マイクル
製作:エリー・サマハ
脚本:デイトン・キャリー
撮影:フィル・バーメット
音楽:ジョージ・S・クリントン

キャスト
フランキー / デニス・ホッパー
マーガレット / ダリル・ハンナ
サル / マイケル・マドセン
ジョーイ / キーファー・サザーラント゛
ヴィック / デイトン・キャリー
サグ / チャールス・キャロル
ジャック / ジャック・マギー
ミゲル / バート・ロザリオ
ポルノ男優 / デヴィッド・シャーク

日本公開: 1997年
製作国: アメリカ ヌー・イメージ作品
配給: ケイエスエス


あらすじとコメント

落ちぶれて疲れた中年男。前回は、亡妻に憑りつかれ、自棄気味、且つ、狭い世界でしか生きられない男を描いた作品だった。今回は、犯罪絡みの哀歌ともいうべき小品。気弱さと低脳さを持つ中年の日常を追う内容だが、何故か気になる作品。

アメリカ ロサンゼルスマフィアのサル(マイケル・マドセン)の子分であるフランキー(デニス・ホッパー)。

彼は良い歳になりながらも一番の下っ端であり、皆から『ハエ』と蔑称されているような男だ。分をわきまえているというよりも、誰に対しても強くでられない気弱な男であり、学もなさそう。

ある日、サルに呼びだされると、彼の資金源であるポルノ・ビデオ製作用主演女優マーガレット(ダリル・ハンナ)が同席していた。一見クールに見える彼を、何故「ハエ」と呼ぶのかと彼女に尋かれ、サルに「大便でも喰らうからさ」と笑われた。当然、何も言い返せないフランキーだが、元麻薬患者で売春婦でもあった彼女に興味を惹かれた。だが、ただ、それだけだ。

また使い走りを言いつけられた彼は、今度はポルノ製作の監督ジョーイ(キーファー・サザーランド)のところに行かされた。

そこで、ジョーイから、内緒の話があると囁かれ・・・

底辺でしか生きられない哀愁漂う中年男の夢を描くドラマ。

古いジューク・ボックスが一台あるだけの部屋。車は旧型の真っ赤なサンダーバードのオープン。

髪をセットし、黒いスーツでビシッと決め、サンガラスをする。だが、ネクタイだけは、既に結んであって頭から被る。そんな主人公に被さるモダン・ジャズの音色。

冒頭は、ウィットに富みながらもクール。だが、ボスや仲間のところに着くと、いきなり蔑まされる。どこかオドオドして、口も達者ではない。

その落差に失笑を生じさせ、彼が日常、どれほど虐げられているかを見せ付けてくる展開。

そんな主人公が、眼前で仲間から侮辱されながらも心ときめかせるのがポルノ女優。底辺の男が底辺の女に恋心を抱く。しかも、本格派女優を目指すという彼女のために、何とか、金を工面して立派な映画を撮りたいと願ったりするから話はややこしくなる。

そこにNY大学映像学科を卒業したのにポルノ映画製作をしている男や、主人公の兄貴分が絡んできての進行である。

更に、主人公は不運続きで、その上、不器用さが不運を増幅させていくという、どこかコミカルな進行なのだが、笑えないのは、自分にも同じような境遇があったからか。

B級感漂う作品で、派手さはないものの、主役を演じたデニス・ホッパーの見事なダメさ加減や、脇役たちも実に存在感がある。

底辺でしか蠢めくことのできない人間たち。それでもその環境で勢力を誇示しようとする人間や、その世界から脱したいと願う人間たちそれぞれが抱える葛藤や開き直り。

泥沼化したヴェトナム戦争の後遺症に派生すると思われる、70年代後半から、アメリカではかなり制作され来たジャンル。

ただし、場末感漂う裏町人生哀歌であり、キャストなども弱いし、内容も決して綺麗ではないので、日本では未公開作品も多い。

本作では、ハリウッドを抱える大都会の片隅で、同じく映像制作でありながら、アンダー・グラウンドなポルノ映画の現場がメイン。

誰一人、綺麗ごとでは生きられない登場人物たち。それでも夢や希望を持つ人間だ。ただし、こちらから観ると、感情移入しづらい人種ではある。

果たして、落とし所はどうなるかと推理させつつ、逃げだしたい人間と、自分らの小さな権力を誇示するために引き留めたい人間たちの行方を笑えないコメディ・タッチで描いているのが、若干、意匠の変わったところであると感じる作品である。

余談雑談 2016年3月12日
早いもので、震災から丸五年が経過した。しかも曜日も同じだった。多くの人たちが、当時の状況を想起したに違いない。 TVでも、ここしばらくは関連付ける番組が増加していた。忘れないことは良いことだが、未だに問題は山積。 何せ、経済最優先であるので