スタッフ
監督:ジーン・サクス
製作:アルトゥーロ&マッシミリアーノ・ラ・ペーニャ
脚本:ロナルド・ハーウッド
撮影:フランコ・ディ・ジャコモ
音楽:ピーノ・ドナッジオ
キャスト
パメラ / ジュリー・アンドリュース
グリマルディ / マルチェロ・マストヤンニ
マルセル / ジャン・ピエール・カスタルディ
ノワレ医師 / ジャン・ジャック・デュロン
ミス・カヌードソン / マリア・マシャード
レグリ婦人 / デニース・グレイ
ピケ医師 / ジャン・ミシェル・カノン
マルガリータ / カトリーヌ・ジャレ
マドレーヌ / フランソワーズ・ミショー
日本公開: 1992年
製作国: イタリア P・チネマトグラフィケ作品
配給: セテラ・インターナショナル
あらすじとコメント
今回も中年男女の微妙な関係を描く恋愛ドラマで繋げた。舞台はヴェネツィアからパリに移り、マルチェロ・マストヤンニとジュリー・アンドリュースという、中々、興味を惹かれる組み合わせ。さてさて、どんな作品か。
フランス、パリ建設会社の現場チーフでイタリア人のグリマルディ(マルチェロ・マストヤンニ)は、歳の離れた若い妻を溺愛していた。
ある日、家に戻ると妻の姿がない。どうやら家出したようだった。突然の出来事に狼狽し、すぐに酒に走る始末。
一方、慈善活動をしているイギリス人で、フランス人医師と結婚し、22歳の息子がいるパメラ(ジュリー・アンドリュース)も、一方的に夫から家をでていくと電話で告げられる。
そして、グリマルディとパメラは、お互いの伴侶がくっついてしまったと知ることとなる。パメラから連絡を受けた彼は、指定のホテルに行くが、意気消沈で酒臭い始末。何とか、共同戦線を張り、互いの伴侶を連れ戻したいと願うパメラだが、どうにもグリマルディは、嘆いてばかりで頼りにならない。
しかも、あろうことか、年の割には美人なパメラを、独りのディナーは寂しいからと誘いだして・・・
お互いが異国であるパリを舞台に繰り広げられるイタリア男とイギリス女の行方を描く大人のラブ・コメディ。
ショックに弱く、すぐに酒に逃げるくせに女好きという中年男。方や、冷たい感じで修道女のようなイメージのイギリス中年女性。
互いに自分の伴侶を連れ戻したいという意見は一致するが、初めから主導権を取るのは女性である。
当初こそ嘆いてばかりのイタリア男は、全世界共通の認識なのか、すぐに眼の前の美人に色目を使う。しかも、酒が入った上でだ。
当然、怒り心頭で冷たくあしらうイギリス女性。
そんな二人が、付かず離れず的な進行を見せつつ、人妻のひとり息子や、これまたラテン系な友人などが絡み、人生は楽しんだ方が勝ちと心底信じるイタリア人と真面目でお堅いイギリス女の対比を見せていく。
それでいて、お互いの浮気相手同士は画面に登場させない。
兎に角、世界共通で男はダメダメという進行であり、日本人とはいえ、やはり複雑な心境になる。
設定、進行など、どうにも半端な印象であるのは、「パリ」が舞台で「イタリア男」と「イギリス女」のラブ・コメなのに、監督がアメリカ人のジーン・サクスだからか。
この監督は「裸足で散歩」(1967)や「おかしな二人」(1968)といったニュー・ヨークを舞台にしたコメディが有名だが、やはりパリのエスプリを上手く描いているとは思えない。
ただし、些かオーバー・アクトだがマストロヤンニの存在感は捨て難い。アンドリュースも上手いは上手いのだが、やはりマストロヤンニの前では霞んでしまうのが残念。
「不倫」をモチーフにしたコメディといえば、知る人ぞ知るイギリス映画の佳作「ウイークエンド・ラブ」(1973)や、フランス映画の傑作「さよならの微笑」(1975)という作品があり、それらと比べてしまうと、どうしても見劣りしてしまうのは、パリを舞台にしながら主役二人と監督に誰もフランス人がいないからだろうか。
どうにもパリの魅力が際立たず、異国者同士だからか、場所や店のチョイスも半端。もっとも、それがお互いが捨てられる要因と描いているのかもしれぬ。
それにしても、もう少し、『ひねり』と『エスプリ』があると、ニヤニヤ出来る大人の映画なのだが。